企業分析

【2021年最新】内資系製薬会社 将来性ランキングTOP10-2020年度決算総集編-

昨年リリースした内資系製薬会社の将来性ランキングシリーズは、大変ご好評いただきました。

今年も2021年の最新版としてUP-DATEされた結果をお届けします!

製薬会社の将来性は皆さん気になりますよね。

就活生、現役の会社員をはじめ投資家の方々まで幅広い層の方にとって関心が高い内容だと思います。

ここでは「売上高」と「年平均成長率」を掛け合わせて一つの答えを示したいと思います!

↓合わせて2020年版もご確認ください。

2021年内資系製薬会社将来性ランキング「売上高」結果

TOP10の顔触れは大きくは変わりませんでした。

注目すべき企業は中外製薬です。2019年度から1000億円も売上を伸ばしました。

エーザイを一気に突き放し、5位まで上昇しました。

一方で厳しい経営環境にあったのが、塩野義製薬です。

前年同期比で-10.9%のマイナス成長となりましたが、その原因は抗インフルエンザ治療薬の安全性懸念に加え、国民の感染予防の徹底によりインフルエンザの流行が抑えられたことが考えられます。

日本国内の医療用医薬品市場は2025年に向かい先進国では唯一のマイナス成長になると予想されています。

既に2014~19年の年平均成長率では-0.2%であり、市場が成熟期に突入しています。

ジェネリック比率も80%を超え、先発医薬品メーカーにとっては厳しい市場環境下にさらされています。

それでもなお、医薬品産業は国民皆保険制度の下で薬価という公的価格に守られているため、他産業と比べても収益性は高いといえます。

2021年内資系製薬会社将来性ランキング「CAGR(年平均成長率)」結果

それでは次にCAGR(年平均成長率)の結果です。

結果を見て驚かれた方が多いのではないでしょうか。

そうです。軒並み大手製薬企業の成長率が低下しています。

唯一昨年発表したCAGR2017-19と比べて伸びている企業は中外製薬です。

これは先にも述べたように、既に日本国内の医療用医薬品市場が飽和状態となっていることに紐づいています。

当然市場がマイナス成長になるということは、多くの企業の成長が鈍化もしくはマイナスになっています。

特に市場を大きく牽引している上位企業ほど市場全体との相関がみられます。

だからこそ、海外市場への進出が必然となる訳です。

上位10社の中でも海外展開に成功している企業、難渋している企業間で差が広がってきています。

例えば中外製薬や大日本住友製薬は海外売上高比率を大きく伸ばしています。

特に大日本住友製薬は海外売上が50%を超えており、国内市場でのマイナス分を補い苦境を乗り越えています。

しかしながら、海外市場を狙うことはメリットばかりでもありません。田辺三菱製薬は某製品での訴訟を抱えており、それが影響し赤字に転落しました。企業間・国際取引上のリスクがあることを念頭に置いておかなければなりません。

2021年内資系製薬会社将来性ランキング売上高×CAGR最終結果

お待たせしました。それでは2021年版将来性ランキングの最終結果を発表します。

※決算発表資料より筆者作成

1位:武田薬品工業

シャイアーとの統合も順調に進み、内資系製薬企業の中では圧倒的な地位を築いています。事業の取捨選択も積極的に行い、長年にわたりプレゼンスを誇っていた循環器・糖尿病領域からの撤退は業界内で大きな話題となりました。パイプラインにも大型製品化が期待される化合物もあり、治験が成功し上市できれば安泰といえるでしょう。

2位:大塚HD

昨年の同率1位からは一つランクを下げましたが、堅調な成長がみられます。グローバル3製品もまだ市場拡大余地があり向こう数年は期待できるのではないでしょうか。ただし、その後に現在の主力を補う製品がでてくるのか不透明な部分があります。一般消費者向けのニュートラシューティカル事業と医薬品事業のシナジーを発揮し、ユニークなポジションを築いていくことを期待されます。

3位:中外製薬

昨年に続き3位となりました。ここ数年では一番勢いのある製薬企業です。年平均成長率では唯一二桁となり、強さをみせています。これまでロシュ社との戦略提携が成功し、海外売上の上昇をトリガーとしさらなる成長が期待されます。今後大型製品の特許切れがあり、チャレンジングな時期も訪れると予想はされていますが、同社の営業体制にテコ入れをするなど、将来に向けた改革をすでに行っています。準備万端といったとことでしょうか。

4位:アステラス製薬

売上高でこそ3位を堅持していますが、成長率では少し陰りをみせています。直近では新たに早期退職を実施することが発表されました。450人程度の早期退職が予想され不安を呼んでいます。それでも、先進的に新しい事業モデルの構築に挑戦しており、当面は売上を維持しつつ将来に向けた投資を継続すると予想されます。。

4位:第一三共

同率4位です。近年は売上高1兆円の壁を越えられずにもがいていますが、同企業は他社と比べても安定感は高いといえます。2025年には1兆5000億円規模の売上を見込んでおり、ここから大きく成長する計画となっています。大型新製品の上市が期待されており、ある程度確実性の高い勝負だと考えているのではないでしょうか。

6位:エーザイ

一気に3ランクダウンとなりました。売上が大きく減少したことが影響しており前年までの勢いに少し陰りがみえてきています。しかしながら、現在FDAからの承認申請待ちである新規認知症治療薬の結果次第では、一気に将来性ランキングで1位に躍り出る可能性を秘めた企業といえます。

7位:大日本住友製薬

2ランクダウンの7位となりました。過去数年は海外戦略に活路を見出し、成長を続けてきました。売上規模も5000億円を突破しています。順調な軌跡を歩んできた半面あと数年で大型製品の米国特許切れ、一気に2000億円程が消失するリスクを抱えてもいます。有事にいかに対応できるかが、将来を握るカギとなります。IPS細胞治療にも期待されます。

8位:田辺三菱製薬

昨年三菱ケミカルホールディングスの完全子会社化となり、グループ内でのシナジーを期待されていますが、現状ではまだ目に見えた効果は発揮されていません。買収した海外子会社の新薬開発中断、ノバルティス社との訴訟問題等、経営上の課題を早期に解決しなければなりません。難しい局面にあるといえます。

9位:協和キリン

1ランクアップで9位に位置しました。主力製品を子会社からバイオセイム(成分・製造工程が全て同一)を発売し、売上減少の影響を最小化させています。長年培ってきた腎臓領域での新製品が待ち望まれます。

10位:塩野義製薬

感染症領域の独自戦略で脚光を浴びましたが、数値をみると厳しさが伺えます。特に昨年はCOVID-19の影響を一番受けた企業かもしれません。ワクチン、治療薬が早期に開発され、日本と企業を救う起爆剤になることが期待されます。

まとめ

いかがでしょうか。2021年版の将来性ランキングではいくつかの企業で順位の変動がありました。

以外にもCOVID-19の影響を受けた製薬企業は少なく、そこからは医薬品は人々の生活には切っても切れない存在であることが分かった年でもあります。

近年は医薬品の開発難易度の高まりや規制の強化があり、製薬企業によっては荒波に飲み込まれそうになりつつあります。

製薬企業の軸となる研究開発力、環境変化に対応し得る組織体制、財務基盤、新分野の開拓にチャレンジできる風土、そのような多面的な観点から覗いてみると新しい発見があるかもしれません。

2021年度も日本の製薬業界の発展に期待しましょう!