企業分析

【日本ライフラインの将来性:2021年4月最新】~MedTech journey~

MedTech journeyと題して今注目の医療機器開発企業、医療系ハイテク企業の現在と将来性を一緒に見て行きましょう!

※MedTech:Medical(医療)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、IoTなどのテクノロジーを医療に活用する取り組みも含めた言葉

日本ライフライン株式会社について

20年3月決算概要

売上高  517億円 
営業利益 104億円 
当期利益 77億円

従業員数 1,164名(連結)1,002名(単体)
平均年齢 39.2歳 平均年収843万円

参考:日本ライフライン IRライブラリー
   会社四季報

特徴

日本ライフライン株式会社は1981年に東京都豊島区に設立し創立40年を迎えた企業です。1999年までは国内外のメーカーの商品の販売を行う商社として実績を積み、2000年以降は自社で開発した医療機器を扱うメーカーの顔、輸入品を取り扱う商社の顔、2つの顔を併せ持つユニークな企業です。

製品セグメントとしては、リズムディバイス(22.9%)、EP(Electrophysiology)/Ablation(47.7%)、外科関連(19.6%)、インターベンション(9.7%)、の4つの製品セグメントで構成されています。日本ライフラインの特徴として商社としての側面を強く持つ為、売上のほぼ全てを国内で上げています。

2020年3月期決算に着目すると、2019年に対して約14%伸長しています。特にリズムディバイス事業の売上が対2019年に対して約100%つまり倍になっている事が特に注目すべき点ではないでしょうか。徐脈の治療に用いられるペースメーカ関連で、ボストン・サイエンティフィック社製品の販売開始の契約に伴い、同社製品の有する長い電池寿命やMRI 撮像条件の拡大等の特長が差別化となり販売拡大に寄与した物と考えられています。

TOPIC

不整脈向けアブレーション

日本ライフラインの事業別売上の約50%を占めるEP(Electrophysiology)/Ablationで事業成長している点が特に注目です。厚生労働省の取りまとめた令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の結果を見ると2019年の死因の順位はこれまでのトレンド同様,第1位「悪性新生物(腫瘍)」,第2位「心疾患(高血圧性を除く)」ですが、その中で不整脈及び伝導障害は重大な心疾患の一つです。その不整脈治療の為の心臓アブレーションカテーテル、ペースメーカーの販売に強みを持つのが日本ライフラインです。

世界の心臓アブレーション市場規模は、2020年から2024年の間に17億7000万米ドル成長し、予測期間中は8%のCAGRで成長する見込みと言われています。

不整脈は動悸、めまいを引き起こし、重症化すると突然死や心不全を招く可能性がありますが、不整脈の中でも発作性上室性頻拍 心房細動心房粗動 心室頻拍に使われるのがカテーテルアブレーションです。ワイヤー形状のカテーテルと呼ばれる治療器具を主に下肢から挿入して、心臓の通電異常を起こしている病変にカテーテルの先端から高周波による熱エネルギーで焼灼する事で治療する方法です。現在では先端にバルーン(風船)が搭載されておりバルーンを病変に押し当てて加熱したり、逆に急速冷却する事で治療する方法も拡大しています。

そのカテーテルアブレーションのシェアで国内トップなのが日本ライフラインです。内視鏡を搭載した新型アブレーションシステムの市場浸透も期待されており、病変の焼灼部位を可視化してより治療がしやすくなる事が見込まれています。

鳥の目虫の目

心臓疾患に対するケイパビリティ

日本ライフラインは、海外導入製品や、国内他社開発製品を取り扱う商社の姿、自社で医療機器を開発する製造業の姿を併せ持つユニークな企業です。

医療機器事業で売上500億円を超える企業の多くが、創設50年以上の歴史を持つ中で比較的若い企業に分類される同社の強さはどこに有るのでしょうか?

高齢化社会と共に拡大して来た、心臓疾患市場に対するケイパビリティがその源泉です。心臓ペースメーカをはじめとして、不整脈、心筋梗塞、狭心症、心臓弁膜症、大動脈瘤などの心臓循環器の疾患の多くに関わり、幅広く心臓、循環器領域の医療従事者と関係構築して来た事

日本より5年は早いと言われる欧米の医療機器を国内で取り扱う事で最先端の医療と関わり、その知見、ノウハウを持つ事で自社開発品にも活かしている事、などがあげられます。

これからの日本ライフラインが将来的に拡大して行く為には、商社として海外導入品に大きく委ねている事業領域を、医療機器メーカーとして躍進し。市場拡大が著しい海外に事業ドメインを向けて行く事かも知れません。

他の成長著しい医療機器企業の共通点は、海外売上高50%を超える点でしょう。日本ライフラインの企業特性として商社の側面が強く、契約企業とコンフリクトを起こす可能性は避けながら自社開発製品で海外にプレゼンスを高めるか。今後注目して行きたいですね。

また、医療機器産業はデジタルテクノロジーとの融合が肝になります。同社がDXをどの様に進めるかも注目です。

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トリプル
ヘルスケア業界でマーケティングの仕事に従事しながら、ヘルスケア業界以外のビジネスにも関わっています。 医療現場起点のインサイトを集めてブログ記事にします。どうぞよろしくお願いします。