企業分析

【2020年12月更新】参謀侍が見た製薬会社の動向と将来性 “アステラス製薬株式会社”

※この記事は2020年12月19日に更新しています

アステラス製薬の名前の由来知っていますか?「明日を照らす」そんな製薬会社に将来育っていくことを目指してつけられたようです。まさに今の時代このアステラスの名前のように自身の将来性に希望をもっていきたいものですね。

今回で内資系製薬会社TOP10の特集は終わりです。次回からは様々な角度から製薬会社の将来性をランキング形式で解説していきますので、乞うご期待ください!!

アステラス製薬基本情報

【2020年度第二四半期】

売上高:6,155億円(対前年-350億円)

営業利益:1,303億円(対前年-377億円)

四半期利益:728億円(対前年-557億円)

従業員数 15,791人(連結) 5,034人(単体)

平均年齢 42.9歳 平均年収 1,088万円

2020年第二四半期は主力製品でグローバル製品である抗がん剤が305億円伸び、その他の主要新製品群を包括すると501億円の成長と力強さをみせています。

しかしながら、独占販売期間満了品、日本での販売契約終了品、また一部コロナウィルス感染症の影響もあり連結売上収益では前年同期比-350億円となりました。

8月に修正した売上予測からは変更が現時点ではありません。

100%の達成を見込んでいるようです。

アステラス製薬ってどんな会社?

医療用医薬品をコア事業とし、日本、米国を軸に5つのエリアにてグローバル展開を行っています。従来の重点領域である泌尿器・循環器から、がん領域へ柱を移行しています。

医薬品市場の変化に対応する形で、RX+™pプログラムと銘打ち従来の事業領域を超えた事業機会を、競合他社に先行して探索しているところです。

アステラス製薬の特徴はなに?

2005年4月に旧山之内と旧藤沢の合併により誕生しました。合併後は両社の強み生かし、泌尿器科や循環器領域でプレゼンスを高めています。

国内企業2位に位置しており安定的な収益を上げている一方で、2019年度には国内外の主力品の特許切れが相次ぐなど、不確実性の高い状況にもあります。そのため将来見越して、2018年度には早期退職優遇制度を行い約700名の人員調整を行いました。

製品開発ラインナップはがん領域に集中しており、産学官連携を積極的に行っています。特にがん免疫では外部との戦略的提携によるイノベーションの創出を図っています。

財務面からは無借金経営を貫いているといった特徴もあります。現金を常に3,000億円以上を保有しており、それが企業の安定性を高めています。

製品アップデート情報

①去勢抵抗性前立腺がん剤は添付文書へのOS(全生存期間)データ追加について米国で承認されました(2020年10月)

②更年期に伴う血管運動神経症状に対する治療剤は、米国・欧州: 第Ⅲ相試験SKYLIGHT 2の全症例で12週(二重盲検)時点の観察を完了、長期試験SKYLIGHT 4で新規症例スクリーニングを停止

③-1転移性尿路上皮がん剤では、治療歴ありで第Ⅲ相EV-301試験(白金製剤および
PD-1/L1阻害剤の治療歴がある患者対象)において主要評価項目(OS)を達成。
第Ⅱ相EV-201試験コホート2(PD-1/L1阻害剤の治療歴があり白金製剤未治療
かつシスプラチン不適応の患者対象)において良好な結果(ORR)を入手

③-2中国: グローバル臨床試験に参画すべく準備中,ブリッジング試験
(第Ⅱ相試験)のIND提出

④筋層浸潤性膀胱がん(ペムブロリズマブ併用) 第Ⅲ相入り

⑤転移性尿路上皮がん(mUC)および筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)治療剤での
売上期待規模は昨年同期時には1000-2000億円規模の期待売上を発表していましたが、今回のアップデートではピーク時3000-4000億円規模に修正されました

Rx+プログラムアップデート情報

新規事業であるRx+プログラムでは確実な進捗をみせています。

①フィットネスサービス事業:神奈川県内のフィットネスクラブを通じて地域限定でサービス開始しました。当サービスである「Fit-eNce」は科学的根拠のあるフィットネスとして、横浜市立大学、横浜市との産官学連携事業です。

医師から紹介を受けた患者が、スマートフォンアプリをダウンロードし提携フィットネスクラブでエビデンスに基づいた運動プログラムを行うことになります。

②光イメージングを応用した精密手術ガイド:第Ⅱ相試験実施中(2020年10月 FSFT達成)米国FDAからファストトラック指定を取得。子宮摘出手術等、腹部および骨盤内手術において尿管の位置を可視化し把握やすくする精密手術ガイドとなります。

③極小の体内埋め込み型医療機器:Iota Biosciences, Inc. 買収に関する契約締結。極小埋め込み機器を体内に埋め込むことで、新たな生体センシングと知慮手段の実現を目指すものです。

具体的にはパーソナルデータを活用し、発症や重症化を予防することや治療の選択肢を広げることなどが期待されます。

参謀侍の目:アステラス製薬の動向と将来性

数年前までは主力品が高血圧治療剤をはじめとしたコ・プロモーション製品に支えられており、開発力不足により将来を心配する声もあった。しかしながら、近年は過活動膀胱やがん領域でブロックバスターを誕生させるなど、現在では国際的競争力の高い企業の一つと言えるだろう。

今はパテントクリフを乗り越えているアステラス製薬だが、今後のリスクが全くないというわけではない。

医薬品ビジネスでは一貫してつきまとう問題であるが、特許切れによる売上の急激な落ち込みと、製品開発難易度の高まりである。

ある特定の製品がブロックバスター化すると、一定期間(おおよそ10年間)の急成長には繋がるが、売上依存度が高くなることで特許切れの後に “落ちてくるナイフ” にもなりかねない。

2019年12月に約3200億円を投じて米国のバイオ企業を買収することを発表した。この先数カ年でさらなる買収が行われる可能性がある。今後大型買収を目論んでいる場合には資金調達面での不安はないと言える。巨額の現金を保有し、かつ無借金経営、そして有事にも安定的な製薬企業であることから1兆円単位の借り入れでも大手銀行もやぶさかではないのではないのではないか。

今後数年は基幹製品の拡大を軸に、既存製品群の強化、新規事業の収益化を目指すことになるだろう。

今年に入って営業組織の再編成を行った。全国に支店を構える形でこれまで組織を形成していたが、支店長職を本社付けとし階層を減らした。これにより、今までよりフラットな組織に近づけたのだと思われる。より現場の地域に事情に合わせた活動を取れるようにしたのではないか。

多くの製薬会社が組織編制の見直しを検討していると予測される。時代に合わせた形を早期に見つけることが競争優位に立つカギとなるだろう。

日本市場の不確実性が高まる中、いち早く事業領域の拡大に取り組んでいるアステラス製薬。製薬企業が生存するニューノーマルを見つけ出すか。今後の動向も注視していきたい。

参謀侍の紹介

個人向け営業からキャリアをスタート。その後ヘルスケア業界にキャリアチェンジしMRを10年間経験。メンバーの育成やプロジェクトの運営などを行う。経営知識を生かしヘルスケア企業の分析や将来の動向を独自路線で読み解く。

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