企業分析

【2020年10月更新】“武田薬品工業”参謀侍が見た製薬会社の動向と将来性

※この記事は2020年10月に更新しています。

過去ブログ記事「製薬企業の今」をリニューアルし、ヘルスケア企業の今を読み解くと題し様々なヘルスケア関連企業の今を解説していこうと思います。

ではスタートはやはりこの企業。武田薬品工業で言わずもがな国内製薬会社ではNo.1企業です。内容は刷新されていますので、是非ご一読ください。

 武田薬品工業株式会社-基本情報-

2020年第二四半期(10月29日更新)

売上収益 15,908億円 

営業利益 2,198億円(財務ベース)

営業利益 5,076億円(Coreベース) 

当期利益 865億円(財務ベース)

当期利益 3,455億円(Coreベース)

従業員数 49,578人(連結) 5,291人(単体)

平均年齢 41.5歳 平均年収 1,094万円

代表取締役CEOクリストフ・ウェバー氏のコメント

「2020年度上期の業績は、当社の安定的なビジネスモデルとポートフォリオの厚さ、そして当社従業員が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる困難を乗り越えて世界中の患者さんや地域社会への貢献に継続的に取り組んできたことによる成果です。

これまでと同様に今回の業績も、当社の主要な5つのビジネスエリアにおけるグローバルブランド14製品の実質的な成長が牽引し、利益率およびキャッシュ・フローの力強い成長を達成できました。当社の革新的な研究開発体制によりパイプライン第1ウェーブの進捗が加速し、今後12ヶ月以内に7つの新規候補物質の新薬承認申請を予定しています。細胞医薬品の製造能力も拡張し、これらはいずれも当社の今後の成長に寄与すると考えています。また、ノン・コア事業等の売却では目標額を超え、2019年1月以降、総額110億米ドルを超える売却を公表し、継続的かつ迅速に負債を減額してきました。

当社は引き続きCOVID-19の治療薬となり得る医薬品の開発に注力しており、CoVIg-19アライアンスの臨床第3相試験に短期間で最初の患者登録ができたことは素晴らしい成果です。

通期のマネジメント・ガイダンスは維持し、フリー・キャッシュ・フロー、財務ベース営業利益、財務ベースEPSを上方修正しました。これは、当社の勢いある成長に対する自信を反映したものであり、COVID-19パンデミックによる困難な環境にもかかわらず、現在の当社業績が良好であることに裏付けられています。当社がこれまで達成してきたことを誇りに思うとともに、2020年度下期も力強い成長を遂げるよう努めてまいります。」

引用:武田薬品工業HP 決算情報

ここまでは資産売却もあり負債の返済は順調に進んでいるようです。

問題は資産の整理が終わった後にも確実に収益を確保できるか否かです。

既存のコア製品群の成長性次第といったところでしょう。

武田薬品工業ってどんな製薬会社なの?

1781年に武田長兵衛が創業された歴史ある企業です。医療用医薬品を柱に一般用医薬品を販売し、グループ会社に運送業、不動産業なども含まれています。

長年日本の製薬業界をリードしており、近年アイルランドのシャイアー社を7兆円にも及ぶ大型買収を完了しグローバルでもTOP10に仲間入りしました。今まで数多くの企業を買収しましたが、Takeda ismは引き継がれ社名も変わらずにあり続けています。

医療業界では知らない人はまずいません。医師の中に武田の薬を処方したことがない方はいないのではないでしょうか?それくらいの歴史と伝統がある企業です。

一方で近年世の中の変化に合わせた構造改革を行っています。2014年には初の外国人社長を迎え入れ、現在のエグゼクティブチームには日本人は19名中4名のみとなっています。従来の伝統的な日本的経営からの変貌を遂げている最中といえるでしょう。

特徴はなに?

10年程前までは高血圧や糖尿病などの生活習慣病の治療薬に強みがありました。現在は事業戦略上、ビジネス領域を主要5エリア(消化器系疾患・希少疾患・血漿分画製剤・オンコロジー・ニューロサイエンス)に再編し、競争力を強化しています。特に潰瘍性大腸炎治療薬が世界でも飛躍的に売れています。

シャイアーと合併したことにより、希少疾患・血漿分画製剤領域にもプレゼンスが高まりました。事業領域を絞ったことにより研究開発力の向上が期待されています。また北米販路の拡大も見込めることから持続的成長を期待したいところです。

将来への不安

2020年10月28日時点の株価は3,431円となっています。

コロナ前株価水準では4,500円の値をつけており、コロナショックで一時3,000円を割り込むこともありました。

その後4,000円台へ持ち直したものの9月後半より下落基調が続いています。

何が発生源となっているのか?

考えられる原因は「フューチャー・キャリア・プログラム」という名の、いわゆる早期退職です。

今回は勤続3年、30歳以上の社員が対象であり本気度が伺えます。

おそらく未だかつてない大胆な決定に、市場は将来的な不安を感じているのだと推測されます。

実際に内部でどのような意思決定がなされているのかは不明ですが、シャイアー買収後の大きな事業転換を図ろうとしていることは間違いないでしょう。

現在進行形で行われているように、コアビジネスエリアを5つに絞り込んでいます。この中には過去中心であった循環器・糖尿病領域が含まれていません。

今後の戦略上選択と集中を打ち出していることから、近い将来に循環器・代謝領域は他社へ移管することも大いにあり得るでしょう。

希少疾患領域が増えるとなると、営業部門に必要な人員数は必然的に低下します。

開発についても、新たなテクノロジーの活用、ベンチャーとの提携を含め自社外のリソースを活用することが加速していきます。

現時点ではまだ布石を打っただけと考えた方がよいでしょう。

経営陣はこの株価低迷には敏感に反応していると思われます。株主からの厳しい指摘もあるでしょう。

まずは企業をスリム化し、その上で利益最大化を図ることは一般的なステップです。

将来性があるか?希望が持てる状態か?現時点ではどちらにも転ぶ可能性がありそうです。

この記事を書いている時点では失望を抱いている従業員は多いでしょう。

しかし、企業は生き物です良いときもあれば悪いときもあります。もう少し動向を見守ってもよいと思います。

今は現金も潤沢にあり、安定感があることは間違いありません。そう簡単に倒れることはないです。内資系企業の中では財務状況は良好です。

いずれにせよ従業員サイドからすると、常に会社がどの方向性に向かっているのかを察知し、自らも一歩先を読んで変化していく必要があるでしょう。

参謀侍の目

数年前には業界に激震が走るできごとがありました。CASE-J試験による誇大広告です。このできごとは業界全体、武田薬品自体も大きく変わるきっかけとなりました。この問題自体は決して許されるものではないですが、結果として企業と医療業界の透明性が広がりより適正な世の中になったのではないでしょうか。

研究開発面では長年大型製品が生まれず厳しい時期が続いていました。しかし、社長がかわり大きく舵を切ったことで競争力が高まってきているように感じます。

一方で、旧シャイアー社の血漿分画製剤にとって脅威となる製品が誕生しているのも事実です。現在の製品価値を最大化し、いかに早く負債を返すか、残りの時間はあまり長くないかもしれません。

注目点はオープンイノベーションを促進する湘南アイパークを設立したことです。これからの時代は一つの企業の枠にとらわれず、能力のある企業同士で協力することで日本発のイノベーションが生まれるのではないでしょうか。日本の未来のために羽ばたくことを期待しています。

働く魅力はなんだろう!?

数年前の問題をきっかけに労働環境が大きく変わっています。当たり前ではありますが正しいことをする、それを実践していると言えます。コロナウイルス騒動でも業界でいの一番に在宅勤務を取り入れました。有休消化率も高くワークライフバランスの高い企業です。

グローバル基準に合わせているため、ある意味外資系企業のような雰囲気もあります。

今後はより日本古来の風土は薄れていき、インターナショナル企業へと変貌していくと考えておいて間違いないと思われます。

参謀侍の紹介>

通信企業でIT営業に携わる。その後ヘルスケア業界にキャリアチェンジしMRを10年間経験。メンバーの育成やプロジェクトの運営などを行う。経営知識を生かしヘルスケア企業の分析や将来の動向を独自路線で読み解く。

 

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