企業分析

【2021年3月更新】“田辺三菱製薬”参謀侍が見た製薬会社の動向と将来性

※この記事は2021年3月に更新しています。

今回の特集は田辺三菱製薬です。老舗企業の一つですね。

昨年田辺三菱は三菱ケミカルホールディングスグループの完全子会社となった初年度、その効果はでてきているのか?

また新たに発表されたVISION30、中期経営計画21-25では何が語られているのか。みていきましょう。

 

田辺三菱製薬基本情報

2020年第3四半期決算概要

売上収益 2,902億円(対前年-72億円) 

営業利益 -547億円(対前年-797億円) 

当期利益 -453億円(対前年-635億円)

従業員数 7,100人(連結) 3,924人(単体)

平均年齢 45.3歳 平均年収 846万円

近年田辺三菱製薬は厳しい経営環境に直面しています。ジェネリック医薬品の攻勢や新たな柱が育たないことなどが起因し、業績のへ影響が大きく表れてきました。

2019年度はノバルティス社との仲裁手続きの影響により、ロイヤリティ収入が計上できず赤字目前まで、収益が大幅に低迷しましたが、今期はニューロダーム社の減損損失-845億円によりさらに厳しい結果となっています。

今期は減損の影響が大きいとはいえ、本業の稼ぐ力が改善されなければ成長が期待しずらい状況が続きます。

田辺三菱製薬ってどんな会社?

三菱ケミカルホールディングスの傘下に所属している内資系製薬会社です。2020年3月には完全子会社化し上場廃止となりました。

2007年に田辺製薬と三菱ウェルファーマの合併により誕生しましたが、起源は5つの製薬会社(田辺製薬、吉富製薬、ミドリ十字、東京田辺製薬、三菱化学)に遡ります。

医療用医薬品他一般用医薬品も扱っています。自己免疫疾患領域に強みを持ち、ワクチン事業では植物由来ワクチンを開発中です。また精神科領域では子会社の吉富製薬と共同プロモーションを行っています。

売上の約85%は国内で構成されており、多発性硬化症やALS治療薬の導出を皮切りに海外売上上昇を目指しています。

特徴はなに?

1990年代、当時は収益性の確保が困難であるといわれていた時代に、関節リウマチ治療薬を国内に導入し、世の中にパラダイムシフトを起こしました。田辺三菱製薬は生物学的製剤における国内製薬会社のパイオニアといえます。

2015年には脳梗塞急性期の治療を目的として創薬されたを薬剤を、ALS治療薬として新たな価値を提供しライフサイクルマネジメントの延長に成功しました。

 UPDATE INFOMATION

3月3日に発表された2021-25中期経営計画では新たなMISION,VISIONが打ち出されました。

新しいMISSION “病と向き合うすべての人に、希望ある選択肢を。”

創業から300年、薬と真摯に向き合ってきた当社。

昨今の医療環境変化やテクノロジーの発展により「薬」だけではない治療の選択肢が増えてきました。

三菱ケミカルホールディングスグループの一員として、グループの力を集結し日々の生活に溶け込んだトータルケアを提供することを目指すことになりました。

そこでVISION30では “一人ひとりに最適な医療を届けるヘルスケアカンパニー”として提供価値に「私たちは、いつも患者さんとご家族の立場に立ち、治療薬に加え、様々なソリューションをお届けします」をおいています。

その実現のための柱として “プレシジョンメディシン” と “アラウンドピルソリューション”の提供を目指しています。

プレシジョンメディシンとは「適切な医療を、適切なタイミング、適切な患者さんに届けること」と定義され患者さんの治療満足度を高めることを実現させます。

具体的には遺伝子解析などを行うことで、最適な患者層を特定し、効果的に治療効果を得られるようになります。

またアラウンドピルソリューションとは治療薬を起点とし、予防から予後にかけてソリューションを提供することを指しています。

早期診断や服薬支援により、患者さん及びご家族のQOL向上に寄与することを目標としています。

これらの実現のためにも日本国内の事業基盤強化と、海外マーケットでの収益性改善が欠かせません。

出所:presen210303.pdf (mt-pharma.co.jp) 

鳥の目虫の目

過去にはミドリ十字社の薬害事件や子会社の不祥事により世間から厳しい目に晒された。だが現在はそのような負のイメージを払しょくしてきた、最前線で医療従事者と向き合っている従業員の努力の賜物といえよう。

これまで売上拡大を目指し、その実現に海外に活路を見出したが、多発性硬化症治療薬のロイヤルティ支払いに関しスイス・ノバルティス社が紛争を起こした。それにより大幅な収益の減額を余儀なくされ多大な影響がもたらされている。

その結果2019年度はコア営業利益190億円、当期利益1億円、2020年度予測はコア営業利益100億円、当期利益85億円と収益性の低さが目立つ状況となっている。

しかしながら、根底にある課題は他にある。次世代を支える大型新薬が、10年以上開発できてないことだ。中核製品が10数年経過しており、未だ大黒柱となっている。

三菱ケミカルHDの完全子会社化による効果は果たしてどれほどのものか?元々HD傘下にいた訳で、株式保有率を上げることで他グループ会社との協業が加速するのか、疑問が残る。当然HDの介入がより強くなるため、ある程度強制力を働かせることは可能であろう。

いづれにせよ、田辺三菱自身が大型製品のライセンス契約、他製薬会社とのアライアンス強化など新たな戦略企業戦略が必要となるだろう。

 

参謀侍の紹介>

個人向け営業からキャリアをスタート。その後ヘルスケア業界にキャリアチェンジしMRを10年間経験。メンバーの育成やプロジェクトの運営などを行う。経営知識を生かしヘルスケア企業の分析や将来の動向を独自路線で読み解く。

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