企業分析

最新【朝日インテックの将来性:2021年8月更新】MedTech journey 〜

MedTech journeyと題して今注目の医療機器開発企業、医療系ハイテク企業の現在と将来性をトリプルと一緒に見て行きましょう!

※MedTech:Medical(医療)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、IoTなどのテクノロジーを医療に活用する取り組みも含めた言葉

朝日インテック株式会社とは

2021年6月期業績

売上高  615億円 
営業利益 127億円
当期利益 99億円

従業員数 9,118名(連結)単865名
平均年齢 36.1歳 平均年収 618万円

参考:朝日インテック IR情報
会社四季報

特徴

朝日インテックは、1976年に大阪で産業機器に使用される極細ステンレスロープの製造・販売を行う小さな町工場として創業しました。

朝日インテックが培ったワイヤ製造技術に目をつけた、心臓血管カテーテル治療のインターベンション専門医から心臓カテーテルに使用するガイドワイヤーの製造を依頼された事がキッカケと成り、医療分野に参入します。

今ではセグメント別に売上を見ると約8割がメディカル事業となっています。メディカル事業の海外売上の比率は約7割と高く、110の国と地域に展開中です。

生産拠点もタイ、ベトナム、フィリピンに構えており。日本の拠点は研究開発・試作に特化させ、海外の工場を量産の拠点にする事で市場拡大中のアジアでの供給体制を構築しています。

2020年6月期の業績に目を向けると、新型コロナウイルス影響により、2020年4月以降の症例数が減少した事などを受けて前年同期比 △1.2%の売上と成っています。

新型コロナウイルス影響、為替動向、医療償還価格の下落などの三重苦が続いており外部要因による減収要因が2021年も続くと思われる中での起死回生に期待が集まります。

TOPIC

オンコリスバイオファーマとの資本提携

2020年12月に朝日インテックとオンコリスバイオファーマの資本提携が発表されました。朝日インテックは長年インターベンション治療におけるガイドワイヤーの製造に特化して来ました。その大半が中心循環系のインターベンションが中心で循環器医師向けが多いのですが、その他 脳、腹部などのカテーテル治療にも力を発揮しています。そんな中でのオンコリスバイオファーマとの資本提携は、朝日インテックに新たな挑戦を感じさせます。

オンコリスバイオファーマは現在、主力パイプラインであるがんのウイルス療法テロメライシン(OBP-301)や次世代テロメライシン OBP-702 などの腫瘍溶解ウイルスを持ちます。しかしテロメライシンや OBP-702 は低分子医薬品と比較して品質管理が難しく製造コストが高額になるバイオ医薬品で有り、食道がんなど腹部に持ち込む事が非常に難しいと言われます。

そこにインターベンション治療で培った朝日インテックのカテーテル技術とのコラボレーションが病変アプローチとして注目されています。腫瘍溶解ウイルスを腫瘍まで安全かつ確実に持って行く為にカテーテル治療が選ばれる事に成る事はIVRを中心とした放射線科医師、消化器内科、脳外科、泌尿器などのがん医療に関係するインターベンション専門医にも注目を集めていると思われます。

鳥の目虫の目

圧倒的なワイヤ技術を支える開発姿勢

侵襲性の低いカテーテル治療は世界的に拡大傾向です。そんなカテーテル治療に欠かす事の出来ないガイドワイヤーの市場シェアは朝日インテックが圧倒的に高く、日本に置いては7割を超えます。

朝日インテックはメディカル領域に参入したキッカケと成る医師から依頼を受けて、医師と共にトコトン拘りを持って開発を進めるスタイルを大切にしています。

今でもその開発姿勢は日本の医師達に高い評価を得ており、インターベンション医師に絶対的な信頼を得ていると言えます。事業戦略的にも見てもグローバルニッチトップを掲げており、徹底的に医療で使われるワイヤに拘り抜く企業姿勢が垣間見られます。

拡大するカテーテル治療

血管は全身に行き渡る臓器です。カテーテル治療は動脈、静脈を通じてステントを留置したり、バルーンを持ち込んだり、ラジエーションを行ったり、薬剤を注入したりと、デリバリー技術として非常に汎用性が高い技術です。

これまでは経皮的冠動脈インターベンション(PCI)などを中心に技術が確立されて来ましたが、今では下肢、肝臓、腎臓、脳、肺などあらゆる臓器に対してカテーテルを持ち込む治療が開発され発展しています。

侵襲性が低く、コストも低い、そして治療効果も高い。患者さんにも大変喜ばれる治療です。

更に肩こりの治療、バイオ医薬品のデリバリーなど多くの治療でカテーテル治療は開発されて行くと言われています。世界人口が膨らむ中でカテーテル治療は需要を拡大させて行く予測の中で、グローバルニッチトップの朝日インテックのワイヤはインターベンション専門医のマストデバイスとして更に拡大して行くのではないでしょうか。

創業から約40年。独自技術を持って医療業界に参入しグローバルニッチトップの地位を確立した日本企業として多くの企業のお手本の様な会社ですね。


MedTech journey これまでの記事一覧

【オリンパス株式会社の将来性:2020年9月更新】MedTech journey 〜

【テルモ株式会社の将来性:2020年9月更新】MedTech journey 〜

【ニプロ株式会社の将来性:2020年10月更新】MedTech journey 〜

【シスメックス株式会社の将来性:2020年10月更新】MedTech journey 〜

【日本光電工業株式会社の将来性:2020年11月更新】MedTech journey 〜

【島津製作所の将来性:2020年11月更新】MedTech journey 〜

【フクダ電子の将来性:2020年12月更新】MedTech journey 〜

【オムロンの将来性:2020年12月更新】MedTech journey 〜

【HOYAの将来性:2021年1月更新】MedTech journey 〜


トリプルの紹介

ヘルスケア業界でMR、新規事業開発、セールスマーケティング、コンサルティングに従事。数多くのセールスマンとの関わり、MR研修やOJT等通じて実践的なトレーニングの経験も持つ。

現場を知るメディカルジャーナリストとして記事をお届けします

ABOUT ME
トリプル
ヘルスケア業界でマーケティングの仕事に従事しながら、ヘルスケア業界以外のビジネスにも関わっています。 医療現場起点のインサイトを集めてブログ記事にします。どうぞよろしくお願いします。