ヘルスケア企業

最新【オリンパス株式会社の将来性:2021年5月】MedTech journey 〜

医療機器開発企業、医療系ハイテク企業の現在と将来性を一緒に見て行きましょう!

MedTech
聞き慣れない言葉かも知れません。まだ一般化はして無い言葉でしょうか。Medical(医療)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、IoTなどのテクノロジーを医療に活用する取り組みも含めた言葉です。

オリンパス株式会社とは

業績(2021年度3月決算)
売上高 7,305億円 前年比△3.3
営業利益 819億円    △11.1
当期利益 129億円    △74.9

医療関連事業
売上高 6,255億円 前年比△2.6

新型コロナウイルス感染症の大流行の影響により厳しい状況です。オリンパスに限った話では無いですが、世界的に手術を伴う治療を延期するなどコロナ禍で緊急性の低い治療行為が減少した事が医療関係事業の売上減少要因でしょう。

また、当期利益の大幅減少は新たに設立した映像新会社の株式の95%を日本産業パートナーズ株式会社が設立した特別目的会社のOJホールディングス株式会社に譲渡した関係で、会計上の表示が理由の様です。


組織体制(会社四季報 参考)
従業員数 34,958人(連結) 5,444人(単体)〈2020.12〉
平均年齢 42.2歳
平均年収 850万円

2021年3月末時点で40歳以上で勤続3年以上の正社員など844人が希望退職の募集により退職している様です。

参考:オリンパスグループ IRサイト 
https://www.olympus.co.jp/ir/data/brief/2020.html?page=ir


オリンパスと言えば一眼レフカメラ!そんな印象ありますか?実は売上の約8割を医療事業が締め、国内MedTechの最大手企業です。

1919年顕微鏡事業で創業、2020年現在は100周年を迎えています。戦後まもなく東大病院と共に胃カメラの開発に着手し、世界初の実用的な胃カメラ(ガストロカメラ「GT-I」)を発売。そこから内視鏡治療における確固たる地位を築き内視鏡関連の特許を数多く抱え競合優位性を維持しています。顕微鏡をルーツにした、レンズ技術を活かした内視鏡関連事業で世界を巻き込んだケイパビリティを発揮しているのがオリンパス株式会社なのです。

TOPIC

リアルタイム AI画像診断ソフトウェア

大腸の超拡大内視鏡画像を AI で解析し、検査中にリアルタイムで腫瘍や浸潤がんを高精度に判別することで医師の診断を補助する内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN-Plus(エンドブレインプラス)」を 2021年 2月5日から国内で発売しています。

2020年8月から発売している大腸病変の検出支援ソフトウェア「EndoBRAIN-EYE」、2019年3月から発売している大腸病変の判別支援ソフトウェア「EndoBRAIN」と組み合わせて使用することが可能です。大腸内視鏡検査における病変の検出から治療対象となる病変の判別、治療方法の選択までの一連の工程を AI が包括的に支援することで、内視鏡検査に携わる医療従事者の負担軽減されると期待です。

超拡大内視鏡 Endocyto で撮影された大腸内視鏡画像を AI が解析し、判別結果(非腫瘍・腺腫・浸潤がんの可能性)を数値で表示します。判別結果は通常検査で行われる内視鏡操作と連動して自動で表示されるため、特別な操作を必要とせず最適なタイミングで支援を受けることができます。判別結果はリアルタイムに表示されます。

超拡大内視鏡観察は病変にレンズを接触させて観察するのが特長です。接触観察により、AI の解析精度のばらつきの要因である対象病変との距離、観察倍率などの観察条件を常に一定にすることで安定した診断支援が可能となり、性能評価試験では、浸潤がんの判別において感度(浸潤がんの病変の画像のうち、正しく浸潤がんと診断された画像の割合)91.8%, 特異度(浸潤がんではない病変の画像のうち、正しく浸潤がんではないと診断された画像の割合)97.3%という高い診断精度が得られています。

参考:オリンパス株式会社企業情報サイト ニュースリリース一覧 2020
https://www.olympus.co.jp/news/2020/nr01704.html

次世代の内視鏡ビデオスコープシステム

2020年は次世代内視鏡システム新製品を欧州・アジアで導入しています。国内でも導入開始されて居る様です。従来システムの導入から約 8 年ぶりにモデルチェンジ。人工知能(AI)を取り入れたグローバル統一モデルで、病変の早期発見、診断、治療に革新をもたらす新技術が搭載されているとの事です。

4つのコア技術

①被写界深度拡大技術(EDOF:Extended Depth of Field)
近い距離と遠い距離の異なる焦点の 2 つの画像を同時に取り出して合成する技術

②赤色光観察(RDI:Red Dichromatic Imaging)
緑・アンバー・赤の 3 色の特定の波長の光を照射、深部組織のコントラストを形成する光デジタル技術

③構造色彩強調機能(TXI:Texture and Color Enhancement Imaging)
通常光観察下での粘膜表面の「構造」「色調」「明るさ」の 3 つの要素を最適化する画像技術

④狭帯域光観察(NBI:Narrow Band Imaging)
血液中のヘモグロビンに強く吸収される紫と緑の特定の波長の光を照射すること
で、粘膜表層の毛細血管や微細構造が強調表示される画像強調観察技術


4つの技術に加え前述の様な人工知能(AI)技術を搭載する事で、オペレーターの経験不足な側面を補い、状況を問わず安定して早期発見、診断、治療を実現出来ると期待されます。

医療のどの分野でも、オペレーターのラーニングカーブの課題は存在する為、若手医師達には強力な援護システムに成るのでは無いでしょうか。

参考
https://www.olympus.co.jp/ir/data/medical.html?page=ir

鳥の目 虫の目

中国市場の2等級病院で拡大

世界的な視点で見た時に、中国市場での業績拡大は注目したい点です。背景には中国政府の早期に病気を治すという国家プロジェクトの影響が大きいです。

下記に列挙するだけでも中国政府の医療政策は多岐に渡ります。


・「衛生事業発展第13次5か年計画」を発表(2016年~2020年)
慢性疾患とがんの発生率の高い地域で、主要ながんに対する早期診断率を55%にする
・「健康中国実施行動意見」を発表(2019年)
早期診断・治療を促進し、がんの5年生存率を2022年に43.3%以上、2030年には46.6%以上に改善する
・「県級病院総合能力レベルアップ計画」を発表(2019年)
国家衛生健康委員会医政医管局が500の県級病院と500の中医病院を三級病院又は三級中医病院と同等の医療水準に引き上げることを目指す

中国は1〜3等級の大枠で医療機関を分類しています。主に高度医療は3等級病院で行われています。中国の国家政策として2等級病院でも最新のモダリティーを導入して病変の早期発見を推し進めています。この様な世界的な機会を戦略的に業績拡大に繋げている印象を受けます。

現場力

約10年前の粉飾決算事件により社会からの厳しい目に晒されながらも、その後確実に業績を上げ国内企業売上げトップの地位を確保した企業の底力が注目すべき点だと思われます。その底力は技術力に加え、現場力でしょう。

現場医師達のオリンパスに対する信頼は格段に高く、特に内視鏡を扱う消化器系の医師達からは、オリンパスの内視鏡無くしては仕事に成らないと言われる程の圧倒的な関係性を築いています。

消化器系のオペに関しては、いつ、どこで、何症例、誰により実施されるか?営業、SEが連携して把握してフォローアップしています。また、日本の医師達は繊細な手技を好む傾向が有る中で、期待に応えユーザビリティを高め続けた事が信頼に繋がって来たと考えられます。

特にアジア、中国は日本のオピニオンリーダー的な医師の影響を受ける傾向も強いため、日本の医師の高い要求に応えた内視鏡は、今後拡大著しい中国、アジア地区での事業拡大に大きな強みでしょう。

製品力に加え長年培った医師達との信頼関係が他社の追従を許さ無いオリンパスの強みと成っています。世界で戦う日系医療機器企業のベンチマークと言える企業として、今後AI・LOT等の分野の開発でも期待して行きたいですね。


トリプルの紹介

ヘルスケア業界でMR、新規事業開発、セールスマーケティングに従事。数多くのセールスマンとの関わり、MR研修やOJT等通じて実践的なトレーニングの経験も持つ。

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トリプル
ヘルスケア業界でマーケティングの仕事に従事しながら、ヘルスケア業界以外のビジネスにも関わっています。 医療現場起点のインサイトを集めてブログ記事にします。どうぞよろしくお願いします。