企業分析

最新【ニプロ株式会社の将来性:2021年6月更新】MedTech journey 〜

MedTech journeyと題して今注目の医療機器開発企業、医療系ハイテク企業の現在と将来性を見て行きましょう!

今回はニプロ株式会社に注目したいと思います。

※MedTech:Medical(医療)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、IoTなどのテクノロジーを医療に活用する取り組みも含めた言葉

ニプロ株式会社とは

業績

企業概要(2021年度3月決算)

売上高 4,555億円 2.9%UP
営業利益 276億円 4.6%UP
当期利益 142億円

組織>
従業員数 35,251人(連結) 4,150人(単体)
平均年齢 40.7歳 平均年収 619万円
参考:四季報 2021年6月時点

参考:ニプロ株式会社 IR資料ライブラリ
https://www.nipro.co.jp/ir/library/2020.html

COVID19の影響で各社が業績を落とす中、好調な業績を残しました。主力製品のダイアライザが比較的堅調に推移したことに加え、北米および中南米での感染症防護製品の特需による利益増や製造原価の低減等によって全体として売上総利益が改善したこと、移動制限等でリモート会議などが促進され、旅費交通費や販売促進費等の経費支出が抑制された事が全体として売上と利益の向上の要因の様です。

ニプロと聞いてそれぞれの立場でイメージが異なる会社がニプロです。なぜなら医療機器も医薬品も共に存在感を出しているからこそこの様なイメージを伴うのだと思います。

ニプロの創業は1947年、電球再生事業でのスタートに始まります。1954年に日本硝子商事(株)(現ニプロ(株))を設立し、アンプル用硝子管などの製造販売に着手しています。その後製薬会社向けに輸液セットの販売を開始し、医療機器事業進出の端緒を開きました。1988年に菱山製薬(株)(現ニプロファーマ(株))に資本参加し医薬品事業へ進出しています。歴史を遡ると医療機器にルーツが有る様です。

セグメント別の売り上げ規模では、医療機器事業が7割強。医薬関連事業が2割弱、ファーマパッケージング事業が1割弱の構成比と成っています。国内と国外では国内が6割弱、米国と欧州で2割強、その他と成ります。

それでは注目のポイントを見て行きましょう。

TOPIC

過疎地域における 5G を活用した遠隔診療・リハビリ指導の実証実験

株式会社NTTデータ経営研究所
株式会社NTTドコモ東海支社
新城市民病院
東海国立大学機構 名古屋大学
新城市
国立研究開発法人理化学研究所
ニプロ株式会社
株式会社ソシオネクスト

上記団体でコンソーシアムを設立し過疎地域診療所における 5G を用いた遠隔診療・リハビリ指導の実証実験の内容が明らかになりました。5G と 4K 映像を使用することによって、腹部エコーやリハビリの映像において良好な解像度が得られ、映像伝送やデータ転送の遅延時間も許容範囲内であり、問題なく遠隔診療やリハビリ指導が可能となることを確認できると見込まれています。

人口減少、過疎化が進む地域に置いて質の高い医療、介護提供をサポートするインフラとなり得る可能性が有り、日本の課題として地域交通インフラの不足により、診療・リハビリ指導を必要とする住民の通院が困難となってしまう状況が有ります。そんな中で、医療従事者の理学療法士は全国的に偏在していますが、訪問リハビリテーションの需要は全国的に増加しています。その様な課題解決には下記の3点が大切の様です。

①高齢者の健康異常を早期に「検知」できること
②物理的距離にかかわらず医療を提供できること
③ 「高解像度な映像・データ」を伝送できることが不可欠であり、高速・大容量かつ高信頼性・低遅延の通信環境

ニプロのこの実証実験での役割は、遠隔診療支援システム「ニプロハートライン TM」の 5G 通信環境下での性能検証になります。日本の医療の困り事解決には他業種連携が大切で有る事の立証になる重要な試みですね。

参考:ニプロ News release

透析治療のニーズ

ニプロと言えば?と聞かれれば「透析・ダイアライザ」と言えます。国内売上だけで見れば、医療機器事業が約1000億円(バスキュラー関連、透析関連、注射、輸液関連など)、医薬品事業が約700億円と事業セグメントも医療機器と医薬品でバランスが取れています。一方で国外では売上の7割を透析関連事業が占めており、中でも透析に使うダイアライザ(人工腎臓:半透膜でできたストロー状の細い管の束、約1万本)が主力と成っています。

特に透析関連市場拡大目覚しいエリアが、北米、南米、中国、インド、アジアパシフィックで毎年順調に拡大しています。その様な背景には世界GDPの成長が一つの要因と言えます。2000年〜2020年の期間で世界実質GDPは伸び続けており。中でも顕著な伸びが上記の様な国々です。成長著しい国では生活水準が高まり、比例して生活習慣病が増え、不幸な結果として透析患者が増えると言う構図でしょう。

日本はCKD及び透析患者が多いと言われていますが、課題先進国とも言われる事から、先々世界各国で透析患者をサポートする社会システムのニーズを予測して、事業拡大を狙った動きが特質すべき点です。

※CKD:chronic kidney disease 慢性腎臓病

鳥の目 虫の目

透析トレーニングセンターを世界に展開

ニプロでは前述した様に、透析関連事業で世界的な拡大をしています。具体的には2020年3月時点で8カ国16施設の自社透析センターを保有しており、1300人超の透析患者をサポートしています。

特に注目すべき点は、ただ透析関連の医療機器や透析センターを拡大するだけでは無く、透析トレーニングセンターを世界中に設立している事も注目すべき点です。透析にはME(臨床工学技士)や看護師など医療スタッフが多く関わりますが、その様な医療スタッフの教育の場も提供しており、ハード面に加えてソフト面のサポートも充実させている点が、さすが日本企業の気配りと包括的なサポート体勢と言えるのでは無いでしょうか。

今後、透析関連の事業にも世界の競合企業が参入して来た時に、目に見えないスイッチングコストとしてニプロの教育システムで力を付けたスタッフがニプロ製品に対する使い慣れや、愛着などが、要因として機能する事を想像すると強みに成ると思われます。

ファーマパッケージングの拡大

多くの医療機器企業に共通する点では有りますが、圧倒的な市場規模の拡大が見込まれる中国市場での展開に注目すべきでしょう。ニプロではファーマパッケージング事業を一つの事業セグメントとして重要視している中で、2030年までに現在の7倍の売上を計画しています。

ファーマパッケージングとは、シリンジ・カートリッジ、生地管、アンプル・バイアルなどの事ですが、中国では世界基準に合わせたガラス容器への対応が進められており、そこにニプロ製品のプレゼンスを高めて市場拡大して行く方向性です。

元来、アンプル用の硝子管を事業の基礎として来たニプロの中核的な魅力が50年を超えて現在進行形で会社を成長させる原動力に成っている事を考えると、如何に自社の特色、強みを軸に事業展開する事が大切か解りますね。


トリプルの紹介

ヘルスケア業界でMR、新規事業開発、セールスマーケティングに従事。数多くのセールスマンとの関わり、MR研修やOJT等通じて実践的なトレーニングの経験も持つ。

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トリプル
ヘルスケア業界でマーケティングの仕事に従事しながら、ヘルスケア業界以外のビジネスにも関わっています。 医療現場起点のインサイトを集めてブログ記事にします。どうぞよろしくお願いします。