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【テルモ株式会社:2020年9月更新】MedTech journey 〜ヘルスケアマーケタートリプルの目〜

投稿日:2020年10月2日 更新日:

MedTech journeyと題して今注目の医療機器開発企業、医療系ハイテク企業をトリプルと一緒に見て行きましょう!

2回目はテルモ株式会社です。

※MedTech:Medical(医療)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、IoTなどのテクノロジーを医療に活用する取り組みも含めた言葉

テルモ株式会社とは

テルモ株式会社のルーツは第一次世界大戦の影響で輸入が途絶えた体温計を国産化するために、北里柴三郎博士をはじめとする医師らが発起人となり、1921年に設立された「赤線検温器株式会社」に有ります。

今でこそ医師がCEOのベンチャー企業も珍しくは無いですが、今から100年も前に医師主導のベンチャー企業として発足した会社なのです。

「国民の保健は衛生思想の普及」にかかっており、「国民の健康が国家安定の基礎」であるという見地からすれば、これは国家的な工業ということができます

上記の文言は設立趣意書に記載されている一文ですが、戦後の日本の発展を考えて志高く発起した様子が伺えます。

将来的な期待も高く、今の時価総額では製薬企業のエーザイやアステラスよりも順位的に上位に位置しています。その様に投資家に高評価を得ている背景を見ていきましょう。
※2020年10月1日現在

参考:テルモ株式会社 ウェブサイトhttps://www.terumo.co.jp/terumostory/1921_2001/cat1_1_1.html


《業績》
売上高 6,288億円 

当期利益 852億円

《組織》
従業員数 26,448人(連結) 5,086人(単体)

平均年齢 41.5歳 平均年収 753万円

売上の構成比を見てみると、日本国内の売上は1,963億円、国外の売上は4,325億円です。70%は国外の売上と成っています。また、医療機器から医療用医薬品、最先端の再生医療まで幅広く事業展開しています。製品セグメント別でみるとカテーテル製品が含まれる心臓血管カンパニー以外に、ホスピタル、血液システムの 3 セグメントに分かれています。


参考:テルモ株式会社サイト IRライブラリ
https://www.terumo.co.jp/investors/library/financial/index.html

TOPIC

前項でもお伝えした通りですが、売上げの70%を海外で売上げ、収益を上げている企業特性から現在ではグローバル戦略に力を入れており、生産拠点の現地化も進めています。近年では海外生産比率が50%を上回っています。

市場規模拡大著しい中国に関しては、現地法人を積極的に傘下に加えています。 ※エッセン・テクノロジー社を買収(18年12⽉完了)

疾患軸アプローチ

がん、糖尿病、心不全、フットケアに力を入れています。また予防→診断→治療→予後の一連の流れで患者さんをサポートするPatient Journeyに着目して事業を構想し実際に出来る立ち位置に有ると考えられます。

では実際の所をフットケア領域の実例を見て行きましょう。

予防

”かくれ糖尿病”と言われる患者を早期に発見する尿糖試験紙を販売しています。かくれ糖尿病は健診などのスクリーニング検査で捉えられていない糖尿病の事ですが、糖尿病が約900万人、予備軍(かくれ含む)は約1500万人とも言われています。糖尿病は重大な慢性合併症へ繋がるリスクが高い事から重症化を避ける意味でもかくれ糖尿病のスクリーニングは重要と成るでしょう。

管理

従来測定の難しかった血糖変動を把握できる、低血糖時と高血糖時にアラートを出す安全機構を備えたデバイスを販売しています。システムは皮下に挿入したセンサーにより間質液中のグルコース濃度を連続的に記録し、得られた情報をモニターに表示する事で予め指導している対処法を患者が自ら実行できる血糖管理サポートデバイスです。

治療

十分な管理を行っていても糖尿病が進展して、下肢の動脈に狭窄が生じる事が有ります。狭窄をそのままにして置くと下肢の血流が妨げられ最悪の場合壊死に到る事になるかもしれません。その場合患者のQOLは最低になるでしょう。その様なリスクを排除する為に下肢動脈の拡張手術が必要になりますが、そこでもテルモは治療に必要なデバイスを自社で開発し網羅しています。

予後

治療後の早期回復を進める事も重要ですが、血流の補助や回復を促し難治性潰瘍や切断を防ぐ治療なども取り揃えています。


Patient Journey。この業界では流行り言葉と言っても良いでしょう。しかし、言うは簡単、実行する事は容易い事では有りません。テルモはこのpatient journeyを単体で実現している稀な企業と言えます。今現在のヘルスケア企業の多くが疾患領域に対する包括的な事業展開を目指して奮闘していますが、patient journeyを実現する為には、医療機器だけでもダメ、医薬品だけでもダメ、医療アプリだけでもダメです。その様な様々なソリューションを手掛ける企業体力と疾患領域に対するケイパビリティーが不可欠でしょう。

鳥の目 虫の目

グローバル化に成功した日本企業のロールモデル

医師が発起したベンチャー企業として約100年前に設立したテルモですが、日本企業で設立100年を迎える企業は他にも有ります。しかしテルモほど短期間で海外展開に成功している企業は少ないでしょう。日本の医療機関でテルモ製品を使っていない施設は存在しないと言っても良いほど、医療サービスの基礎的な所に入り込んでいます。そしてその多くがトップシェアです。海外でも同様にテルモの繊細な技術力が評価されているのでは無いでしょうか。

M&A に目を向けると、血液システムセグメントで、2011 年に 26 億米ドルを投じて輸血関連事業での世界大手Calibian BCT を買収し、世界トップの地位を獲得しています。グローバル戦略の傾向を見ても海外の治療機器大手メーカーMedtronicに対して規模は勝てずとも、収益性の高さや製品セグメントのバランスの良さの点で劣りません。グローバル展開を考える日系企業にとってはロールモデルとなるヘルスケア企業でしょう。

外資系企業でグローバル展開している企業の場合、日本人が本部機能として活躍する機会は非常に少ないですがテルモの場合はグローバルを視野に入れたキャリアを目指す特に若い人材には大きなチャンスが有るかもしれませんね。

医療機関と併走する企業スタイル

テルモは医療機器から医薬品まで取り揃えこれまで、世界を牽引する様な製品を開発して世に送り出して来たと言えるでしょう。例えば、冠動脈カテーテル治療の領域に関しては、一般的に大腿動脈(足の付け根付近)からカテーテルを挿入する手技が主流だった時代に、患者負担を軽減できる橈骨動脈(手首)から挿入する手技を医師と共に普及させる為のデバイス開発を行い世に送り出し、今では世界の医師の80%が橈骨からの手技を選択して世界のスタンダードを作っています。侵襲性が低く、医療経済的な負担も軽減させるとされます。

また、「こわくない注射針」をコンセプトに独自の非対称刃面構造(アシンメトリーエッジ)を採用して小児患者でも痛みを極限まで軽減した注射針を送り出しています。それにより注射に対する恐怖心を軽減する事なども実現しています。

この様な医療現場に転がる些細な困り事に目を向けて解決する姿勢は、北里博士のイズムを受け継ぐ医師のパートナーとして併走して来た企業スタイルと、現場の努力が根底に有る事は間違い無いでしょう。


トリプルの紹介

ヘルスケア業界でMR、新規事業開発、セールスマーケティングに従事。数多くのセールスマンとの関わり、MR研修やOJT等通じて実践的なトレーニングの経験も持つ。

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