MedTech journeyと題して今注目の医療機器開発企業、医療系ハイテク企業の現在と将来性をトリプルと一緒に見て行きましょう!
※MedTech:Medical(医療)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、IoTなどのテクノロジーを医療に活用する取り組みも含めた言葉
目次
オムロン株式会社とは
2020年3月決算
売上高 6,779億円 ヘルスケア事業 1,120億円
営業利益 547億円 ヘルスケア事業 135億円
当期利益 749億円
従業員数 28,006人(連結) 4,980人(単体)
平均年齢 44.6歳 平均年収 828万円
参考:オムロン株式会社 HP IR室資料 https://www.omron.co.jp/ir/
会社四季報
事業概要
オムロンの社名の由来ご存じですか?
オムロンは本社のあった京都・御室(おむろ)の地名と創業者の立石一真が、ヘア・パーマ・アイロンを開発した時、女性用商品にふさわしい響きの柔らかいブランド名として、「オムロン・Omlon」を考案した事にルーツが有ります。その後「OMRON」を社名として、21世紀への第一歩を踏み出し1990年1月1日、正式に命名されました。
創業は立石一真が1933年にレントゲン撮影用タイマの試作品を完成させた事に有ります。1959年に制定した「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」の社憲を貫き、今では世界約120の国と地域で事業を展開しています。
事業セグメントは制御機器事業(52%)、電子部品事業(13 %)、社会システム事業(12.4%)、ヘルスケア事業(16.5%)、その他(6.1%)に大きく分類されます。中でも大きなウェイトを占める制御機器事業がオムロンの象徴でしょう。モノづくり現場で活躍するセンサ、コントローラをはじめ20万点に及ぶ幅広い製品を通じて「オートメーション(自動化)」を実現しています。
海外売上比率は約61%。中でも成長の牽引役は中国圏で海外売上のウェイトでも中国、次いでEUと成ります。グローバル化に成功する企業の特徴と成る海外売上50%以上を成し遂げています。
そんな中でヘルスケア事業ではこれまで培って来たセンサ技術、解析技術を応用して「循環器事業」「呼吸器事業」「ペインマネジメント事業」の3つの事業領域をコア領域と定めて展開しています。中でもオムロンの血圧計は有名です。中国、欧州、アジアでの血圧計の需要は堅調に推移しています。
TOPIC
サブスクリプション型遠隔医療
今話題の遠隔医療をターゲットに心電計付血圧計を用いた、 遠隔医療事業をグローバルに展開する権利を獲得しました。背景には、米AliveCor, Incへの出資が大きくAliveCor社は世界で唯一、米国の薬事法の許認可を取得した モバイル型心電計と遠隔診療プラットフォームを提供している企業です。
まだ小さな企業ですが、数千万件の日常生活下における心電データを保有し、 AI技術を用いた解析アルゴリズムで、医師の診断と治療を支援しています。 全米で有力な総合病院である、メイヨー・クリニックとも提携し、 米国ではすでに、数万人の有料会員を擁しています。米Appleも参戦してくると考えられる市場でアドバンテージを持ちます。
サブスクリプションモデルで登録されたユーザーに、ウェアラブル端末型の心電計とモバイル型血圧計を提供し、日常的に心電計と血圧データを集めます。これまで蓄積して来たオムロンとAliveCor社の持つビッグデータと、解析アルゴリズムを活用して主治医と連携して情報共有します。それによりユーザーが緊急搬送される前にインシデントを察知して対応する事で、重症化のリスクを低減させる事が出来ると考えられます。
米Appleなどの競合企業にも心電計を測定可能な携帯端末を保有する企業は存在します。しかし血圧計も併用出来る事がポイントです。
一般的に血圧が高いと、正常より血管の壁に高い圧力が加わるため、心臓に血液を送る冠動脈の壁が厚くなり、動脈硬化の原因となります。その結果プラーク(脂質の固まり)が破裂するなどして、急性冠症候群として救急搬送されるリスクが高まります。血圧と心電図を共にモニタリングする事は推奨されており、この点はオムロンの強みと成ると思われます。
鳥の目虫の目
欧米諸国のUDI規制
近年、安全な医療提供を促進する為UDIを用いた医療機器の個体管理が強化されています。UDI(Unique Device Identification)とは、医療機器の個体管理・個体識別のための国際的な法規則です。UDI 規則への対応のために欧米諸国への医療機器輸出時には必ず製品へのGS1コードの表示が必要です。
新型コロナウイルスの影響によって、 PCR検査や血液分析を行う卓上型の医療器の需要が急速に拡大しています。 これらの医療器に投入される検体のデータ管理、トレーサビリティが 重要に成ります。
オムロンでは長年培って来た、トレーサビリティ技術としてUDIコードの読み取りが可能なコードリーダに加え、 多種多様な手術用の医療器具に、錆びを発生させることなく直接印字ができる レーザー技術が有ります。
今後、急速に広がるPCR検査をはじめUDI管理にオムロンの技術が用いられると思われます。
データビジネス
今後世界のビジネスモデルはAI、IOT、5G、クラウド技術などを活用したデータビジネスの時代だと言われていますが、特にヘルスケア業界はその主戦場と成ると考えられます。
これまでの医療機器企業は医療機器の開発の際に、出来るだけ物理的な品質向上に主眼が置かれていました。しかし今後は患者や医療従事者が医療機器を活用する事で得られる継続的な付加価値に注目が集まっています。UI(ユーザーインタフェイス)の向上、クラウド技術を活用したソフトウェア更新技術向上、IOT・AIを活用したエッジコンピューティングによるデータ集積など、医療機器の開発も優先すべき点が常に変化して行きます。
オムロンとAliveCor社の共同事業は正に象徴的な現象です。これ以上血圧計や心電図の計測器としての物理的な技術向上に力を注ぐ事にニーズは無く、むしろそこから得られた膨大な血圧データと心電図データをAIに学習させて独自の解析アルゴリズムにより、患者や医療従事者をテクノロジーの力でバックアップして行く事で、QOL(Quality of Life:生活の質)やADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)向上に貢献する。それこそが今後の医療機器企業に求められる技術革新だと思われます。
それこそMedtech(医療とテクノロジー)の融合だと思います。オムロンの様な企業がもっと日本から生まれる事に期待したいですね。
MedTech journey これまでの記事一覧
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トリプルの紹介
ヘルスケア業界でMR、新規事業開発、セールスマーケティングに従事。数多くのセールスマンとの関わり、MR研修やOJT等通じて実践的なトレーニングの経験も持つ。