“だけじゃないTEIJIN”
いつからでしょうか、このフレーズを聞くようになったのは。
調べてみると約20年前の2002年から用いられていたようです。
帝人は製品・サービスを提供しているだけじゃない。 未来の社会に向けて価値を提供していくといった企業姿勢を表しています。
今年の新社会人が生まれたころでしょうか。それだけの時を経て人々の脳裏に刻まれてきたようですね。
さて、このように誰もが社名を聞いたことがある帝人株式会社、ただその実態は意外と知られていないものです。
素材の会社?ITもやっている?いやそれだけじゃない、環境、そしてヘルスケアにも進出しています。
当記事ではヘルスケア分野を中心にTEIJINとはどのような会社なのか迫っていきたいと思います。
目次
帝人株式会社概要
2020年度 第三四半期決算結果
売上高 6,097億円(対前年比-5.8%)
営業利益 452億円(対前年-6.2%)
経常利益 429億円(対前年比-9.7%)
従業員 20,931人(連結)2,895名(単体)
平均年齢 43.1歳
平均年収 735万円
※出所)2020年 第三四半期決算発表資料
帝人社は「自動車」「航空機」「ヘルスケア」「医療用防護具」「IT」を主要市場として、事業活動を行っています。
事業別売上構成割合はマテリアル事業領域(38%)繊維・製品事業(36%)ヘルスケア事業領域(18%)IT事業(6%)その他(2%)となっています。
第1四半期は自動車、航空機セクターでCOVID-19の影響を大きく受けました。自動車セクターでは第2四半期以降回復に向かっていますが、航空機セクターでは足元でも低調となっています。
ヘルスケア、ITセクターでは影響はほぼなく底堅さをみせています。
帝人の歴史
創業者の秦逸三と久村清太が1915年に製糸場を買い取り、1918年に帝国人造絹絲(株)を設立したことが始まりです。
繊維を主戦場に置きつつも多角化経営による、事業成長を目指しました。しかし、無謀ともいえる経営を行っていたがために一時は非常に厳しい環境下に晒されることも経験しています。
ヘルスケア事業の始まりは1980年に重症感染症治療薬を発売したことを皮切りに、医薬品事業を開始しました。1982年には酸素濃縮器を発売し、ヘルスケア事業は医薬品と在宅医療の2本柱で現在に至っています。
約40年をかけて1500億円の事業規模となり、現在は新事業にも歩みだしています。
近年は、数量ベースでは成長を遂げているものの、外部要因の影響を受け横ばいとなっています。
帝人のユニークさは「医薬品」と「在宅医療」を組み合わせた事業展開です。
疾患領域では「骨・関節」「呼吸器」「代謝・循環器」のセグメントで存在感を示しています。
ヘルスケア事業の将来性
先般発表がありました通り、武田薬品工業より糖尿病治療薬を1330億円で譲渡されました。
譲り受けました4剤の国内売上は約308億円(2019年度)であり、事業基盤の強化、主力製品の特許切れへの対応策としてこの取引に至りました。
既存の主力市場にて販売面でのシナジーを発揮することが期待されています。
しかしながら、内2剤は発売から10年経過することもあり、成長の波が揺らぐ時期が続くものと予想されます。
ヘルスケア事業ではこれまで培った医薬、在宅医療そしてITを組み合わせた強みを生かして、より幅広い領域にチャレンジしていくことが中期経営計画にて打ち出されています。
具体的には在宅医療市場に対してデジタル技術を活用した、医療用多職種連携システムの提供により地域包括ケアシステムへアプローチをし、自立を支援することを目的としリハビリ・介護領域へサービス提供を目論んでいます。
さらに予防・健康増進領域には連携システムの他に機能性食品事業の拡大を目指しています。
それに伴い組織構造にもテコ入れを行っています。従来では医薬品と在宅医療を別部門に分かれていましたが、同一の営業本部内に統合され両エリアに同一の営業パーソンが軸足を置いて活動することになりました。
地域に根差したテーラーメイドの営業活動を展開していくものと思われます。
事業への投資の観点からもヘルスケア領域に力を入れていることがわかります。2017-2019年度では500億円でありましたが、2020-2022年度には1600億円もの資金を設備投資+M&A枠として、次世代成長領域に位置付けている「地域包括ケア関連」「機能性食品」「新規ヘルスケア」に当てています。
地域包括ケア関連ビジネスは収益化が難しく、成功を収めている企業はまだほとんどないといえます。その中でも光の扉を見つけ出し成長の階段を登ることができるのか、帝人の将来のカギを握っているでしょう。