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注目製薬ベンチャー企業:ステラファーマ株式会社

2021年4月22日に医薬品ベンチャー企業であるステラファーマがマザーズに上場しました。

IPOにより市場から推定50億円以上の資金を調達し、事業を大きく成長させる段階に差し掛かっています。

一体ステラファーマとはどのような企業なのか、将来の課題は何か、考えていきたいと思います。

ステラファーマ概要

ステラファーマは2007年6月に親会社である、ステラケミファの100%子会社として設立されました。

元々はステラケミファに在籍していた代表取締役会長である浅野氏が、ホウ素同位体高濃縮技術に着目しがん治療での活用を目指し開発を行ってきました。

それまでは、理論上は効果的な治療を行えることは判明していましたが、その実現には高強度の中性子源が必要であり、住友重機工業株式会社がその開発に成功したことを受けBNCTの事業化に着手することになりました。

※BNCTとはBoron Neutron Capture Therapyといわれる新しい放射線治療です。

ホウ素の安定同位体を用いることで選択的にがん細胞が破壊されます。

2008年に第一種医薬品製造販売業許可を取得し、2013年には第一種医療機器製造販売業許可を取得しています。

現在は医薬品開発事業の単一セグメントで事業運営が行われており、住友重機械や株式会社CICSと共同で開発を行い、医薬品卸売業者を通じて販売されています。

また医薬品の製造は外部委託をしていることから、ステラファーマ本体は事業の中枢機能を担い、産学連携の元、開発・販売が行われています。

過去3ヵ年の売上推移をみてみると、2018年3月(11期)2019年3月(12期)2020年3月(13期)は売上が実現されていません。

医薬品業界に精通している方であればご存知のことですが、医薬品は国の厳格な審査を経て承認を受け、その後薬価収載されて初めて保険適応となり、医療機関で処方できるようになります。

裏を返せば、承認が下りなければ一円も売上が立たず、それまで投下した資本は全てドブに捨てることになります。

幸いステラファーマの開発製品は市場からも求められており、かつ十分なエビデンスが認められ2020年5月に販売を開始しました。

その結果2021年3月期第三四半期では155,919千円の売上が実現しています。まだまだ市場導入期ということもあり、現状は規模の小さい金額ですが、今後の伸びに期待されます。

ステラファーマ株式会社(2007年6月設立)

従業員数:43人 平均年齢:44.9 平均勤続年数:5.1年 平均年収:6,779,580円

出所:新株式発行並びに株式売出届出目論見書

主力製品は何か?

現在の主力製品はBNCTに用いる1剤のみであり、製品開発を進めています。

原料を親会社であるステラケミファと独占契約を行っており、現在は競合となる製品はありません。

当該製品は厚生労働省が指定する先駆審査指定制度であり、2020年3月に世界初の薬事承認を取得しました。

開発パイプラインを確認すると、現在承認を取得している頭頸部癌を皮切りに、脳腫瘍、悪性髄膜腫、メラノーマが臨床試験に進んでいます。

BNCTは中性子発生装置である医療機器との組み合わせによる治療となり、今後も住友重機工業やCICSとの協業を継続し開発を行っていくものと思われます。

今後の経営課題は?

販売・拡大面

BNCTは高額な医療機器を必要とする治療であるため、専門性が極めて高い大学病院や都市の中核施設で治療が行われることになります。

2021年4月現在では全国で僅か9施設*しか治療を行っておらず、まだまだ一般化されていない治療です。

*京都大学複合原子力科学研究所粒子線腫瘍学研究センター、南東北BNCT研究センター、筑波大学脳神経外科放射線腫瘍科他6施設

参照:医療機関と窓口 – 中性子捕捉療法(BNCT) (antm.or.jp)

今後の対象となる病院も限られているでしょう。その点では数多くの営業部隊(主にMR)は必要がないとも考えられます。

ただし、現在43名の従業員と役員7名の総勢50名規模の組織体制であり、純粋な営業人員は数える程度だと思われます。

いくら良い製品を保有していても、それを広める仕組みが整っていなければ広がりません。エビデンスレベルの高さに加えて、確実に情報伝達するチャネルが必要です。

特に日本の保守的なマーケットの中ではステラファーマのような新興企業は、医師らとの関係性を一から築き上げていくことに時間を要します。

大手製薬企業でさえも、新規市場参入の際には既に同市場でプレゼンスがある他社とのアライアンスを組むことが珍しくありません。

CSOの活用を含めた戦略的マーケティングが必要となるでしょう。

海外進出も既に予定されております。

国が変わるとルールも変わるため、自社だけで進出することは現実的ではありません。

一般的に同社規模の企業が海外進出する場合には、製品を他社へ導出し治験から販売まで全てを預けるケース、開発は共同で行い、販売を委託するケースなどがあります。

どちらにしても、ステラファーマにとってお互いが信頼しあえる、現地で基盤がある企業との連携が欠かせません。

治験失敗による訴訟リスクなども起こりうることも含め、念入りな調査が必要となるでしょう。どの企業と組むかによって命運が大きく分かれるでしょう。

資金調達面

今回のIPOを含む資金調達では、当初計画において約40億円の取得が見込まれていました。蓋を開けてみると、株式市場からの評価は高く、設定価格の1.5倍の値がついたことで、潤沢な資金を獲得することができています。

24年までの開発資金に約11億円を充てるとされており、長期借入金の返済や海外展開における見込み費用等を差し引いても余力ができたといえるでしょう。

そうは言っても医薬品事業は不確実性が高いことから、常に安心できない状況は続くでしょう。臨床試験の失敗及び遅延等により予定外のコストがかさむ可能性は否定できません。そのためにも無駄なコストは極力発生させない努力が必要となります。

先にも述べた通り、事業継続には市場拡大による収益の安定化が必須となります。

ステラファーマは独立した経営の舵取りを行っており、銀行・VCや大手製薬企業からの出資も含め常にキャッシュフローを確保できる体制は整えていきたいところです。

終わりに

医薬品業界は開発面で日本企業が世界に後れを取っている傾向にあります。資金や規制面でベンチャーが育ちにくい環境にあります。

そのため、有能な研究者は欧米を中心とした海外へ流出してしまい、さらに革新的企業がでてこない循環となっています。

今回のステラファーマのような企業から日本の底力を発揮してほしいと思います。

今後に期待しましょう。

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