※この記事は2021年2月に更新しています。
今回は大日本住友製薬の特集です。ベテランの方々にはマルピーといった方がしっくりくるかも!?ではみていきましょう。
目次
大日本住友製薬基本情報
2020年度第三四半期決算成績
売上収益 3,948億円(対前年377億円増)
営業利益 875億円(対前年61億円増)
当期利益 703億円(対前年263億円増)
従業員数 6,166人(連結) 3,062人(単体)
平均年齢 42.3歳 平均年収 891万円
第三四半期決算ではノバルティスファーマ社から移管したエクア・エクメットの売上が寄与し377億円の増収となりました。
売上の多くを占める北米市場はCOVID-19の影響が想定よりも小さく、主力製品の伸びが寄与し前年を上回りました。
21年度は日本国内にて2型糖尿病治療薬の発売を控えており、来年には管理指導アプリの上市も計画されています。
大市場である糖尿病にて新たな薬剤と、治療アプローチを展開することで少しずつですが製薬企業の新しい形がみえつつあるように感じます。
製薬企業とデジタルのコラボレーションで何が生まれてくるのか期待大です。
一方開発中の抗がん剤が第三相試験にて主要評価項目が未達であったとの発表がありました。(2021年2月9日)
残念ながら業績への影響は免れないでしょう。
米国市場では子会社のマイオバント・サイエンシズを通じ、進行性前立腺がん治療剤を発売しました。
成人の進行性前立腺がんを適応症とする経口剤としては、米国で初めて承認されたこともあり、ピーク時年間売上高は1000億円以上が見込まれています。
海外市場でのプレゼンスの高まりが期待されます。
大日本住友製薬ってどんな製薬会社?
起源は1897年の大阪製薬に遡ります。2005年10月に大日本製薬住友製薬が合併し、誕生しました。
2020年4月より重点開発領域を精神神経領域/その他・がん領域・再生/細胞医薬分野・スミトバントグループの4領域に再編しました。
精神神経領域を強みとし、開発性成功率*は業界平均9.6%を上回る15%となっています。
*臨床成功確度(フェーズ1⼊りした化合物の承認される確率)
特徴はなに?
過去には高血圧薬が柱でありましたが、現在は精神神経系他スペシャリティ領域に特化しています。
またiPS細胞を用いた再生医療の実用化に向けて京都大学と共同開発を進めています。未知の領域に製薬企業の中では先んじて飛び込んだ形となっており、収益性含め競合のベンチマークとなりえます。
2019年にはiPS細胞を用いた医薬品開発に強みをもつ豪バイオベンチャー「ロイバント・サイエンシズ」と戦略的提携を結びました。総額30億ドルもの案件で、具体的にはロイバント社から5つの子会社を買収による複数の新薬候補を獲得、ロイトバンド社の株式11%の取得を行いました。
2019~22年度には複数の製品が米国で承認される見通しで、このうちいくつかはブロックバスター候補として考えられています。
鳥の目虫の目
ここ数年で大きく舵取りを行わざるを得ない原因は何といっても大型製品のパテント切れです。ラツーダは北米で年間約2000億円を稼ぎ出すブロックバスター、つまり一剤で売上の50%を支えていることになります。
そして2023年に特許が切れるとその多くの売上(北米では通常9割減といわれている)を失うことになでしょう。
製品開発は日本市場でも悩みの種となっていました。当初の計画では2015年度の申請を予定していましたが、治験段階で良好な結果を得られず見送ることになりました。
ピーク時には300億円は目指せるポテンシャルはあるが、開発費用が大きく膨らんでしまったことは大きな痛手となっていると思われます。
道を切り拓くために当社では過去最大の買収を行いました。起死回生の一発を期待しての買収であると目されますが、獲得した化合物は子宮筋腫や過活動膀胱治療薬でブロックバスターも目指せると同社は目論んでいます。
しかしながら、既存のコア領域とのシナジーはみられていません。ロイトバンドは重点領域の一つとして独立性を保っており、伸るか反るかの側面が強いようにも感じられます。
ただこの買収ではパイプラインの他、独自のテクロノジーも手に入れました。新たな道を開拓していくことを期待しましょう。
※2021年2月追記
2021年2月1日に新たにベンチャーファンドへの出資が発表されました。
Kicker Venture Partners I, LLCが1月に設立したベンチャーファンドへ約20億円を出資することになりました。
デジタル・セラピー、スマートデバイス、データ解析・AI、個別化医療、最先端治療デバイス・医薬品等のデジタルヘルスケア技術を活用して、主に米国・カナダ・日本でビジネスを展開するベンチャー企業への投資をするとされています。
Beyond the medicine 医薬品事業を越えたヘルスケア企業へと変貌を遂げる足掛かりをつかみたいとの意気込みを感じます。
参謀侍の紹介>
通信企業でIT営業に携わる。その後ヘルスケア業界にキャリアチェンジしMRを10年間経験。メンバーの育成やプロジェクトの運営などを行う。経営知識を生かしヘルスケア企業の分析や将来の動向を独自路線で読み解く。
前の記事:参謀侍が見た製薬会社の動向と将来性#2 “中外製薬株式会社”
次の記事:参謀侍が見た製薬会社の動向と将来性#4 “塩野義製薬”