製薬会社の動向と将来性を参謀侍が解説するシリーズ第13弾になります。
今回は眼科領域に特化している参天製薬の特集となります。
これまで目薬を差したことがある方は、必ず参天製薬製を使ったことがあるはずです。
それくらい眼科領域で圧倒的シェアを誇っています。
それでは、将来性を含め動向を探っていきましょう。
目次
参天製薬企業概要
参天製薬企業概要
2020年度第一四半期
売上高 576億円(前年比-3%)
営業利益 80億円(前年比-13%)
四半期利益 61億円(前年比-4%)
従業員 3,805人(単体)4,108人(連結)
平均年齢 42.3歳
平均年収 8,190千円
※2020年度第1四半期決算発表資料を参照
参天製薬は医療用・一般用点眼剤(目薬)を製造販売している製薬企業です。
1890年の創業当初は風邪薬を中心に事業展開していましたが、戦後から事業戦略を切替え現在の点眼剤(目薬)の専業メーカーへと生まれ変わりました。
国内医療用眼科薬市場は約4000億円ある中で、シェア50%という圧倒的な数値を勝ち取っています。
それ故に眼科医からの信頼は厚く、参天製品の処方経験がない医師は存在しないといえるでしょう。
また一般用以上でもロート製薬に次ぐ2位に位置付けており、名実ともに同領域でのガリバー企業となりました。
“天機を参与する”
自然の神秘を解明して人々の健康の増進に貢献するということを意味しています。
※同社HPより
基本理念に同社社名の由来となった考えが置かれています。
参天製薬の将来性
参天製薬は過去十年間で大きく成長を遂げてきました。
2010年時点では1,108億円であった売上高が2019年には2,416億円と2倍以上の成長を果たしました。
成長の背景にある要因としては、国内での事業基盤強化や中国・アジア市場での売上拡大、北米市場への進出があります。
国内市場では網膜疾患用の薬剤が成長ドライバーとなっており、またコンスタントに新薬を上市していることで先発品の特許切れに対応し、結果として企業の成長サイクルを伸ばすことができています。
中国市場でも二桁成長を続け、医療用眼科薬市場でシェアNo.1の座についています。
日本国内の市場環境が悪化する中で、先行してグローバル展開に舵を切ったことがこれまでの成長を支えているといって間違いないでしょう。
ではこの先向こう10年間大きく成長を遂げるのか、それとも緩やかに成長するか。
私の意見としてはさらに成長する可能性があると考えています。
ただし、この期間内に国内売上の40%近くを支えている網膜疾患用薬剤の特許切れが見込まれます。
その分のリカバリーができるか否かで結果は大きく変わるでしょう。
2020年7月には新たな長期ビジョンが発表されました。
そこでは “Santen Pharmaceutical” から “Santen”に生まれ変わることが発表されました。
これはどういうことか?
これまでの眼科用医薬品メーカーから、眼科医療メーカーに変貌を遂げるという意思表示です。
つまり事業領域を広げることになります。
対象市場を医薬品のみから、眼科医療全体へと広げることで、デジタル化への対応・新規事業の開発や今までにない治療の創出や予防領域もカバーすることになります。
多くの新興企業が医療マーケットには参入を試みていますが、眼科領域にはまだ革新的な企業が参入していないように見受けられます。
圧倒的優勢性を持つ今、攻めに転じ、ベンチャー・ユニコーン系企業を巻き込こんだ形でポジションをとることができればしばらく安泰が続くといえます。
コロナ禍の影響
一時的に来院患者減による影響がありましたが、現時点では計画通りの進捗となっています。
足元の医療機関の動向をみると、コロナ前水準には近づきつつあります。
来院頻度こそは減少していますが、慢性疾患であれば数ヶ月分の薬剤をまとめて処方されるので、この先COVID-19が緊急事態宣言をだすほどに猛威を振るわなければ年度末まで計画を下回る可能性は低いといえます。
季節性の花粉症点眼薬への影響は、今年ほどではないものの来年も軽微な影響が予想されます。
まとめ
過去10年間で飛躍的成長を遂げました。
50%の国内シェアを持つという、普通では考えられない強さを持っています。
しかし、そんな参天製薬でも世の中の急速な変化の波に飲み込まれてしまう可能性はあります。
これまでの伝統的事業からどのように脱皮していくのか、どれほどまでに本気で変革を行う意思があるのか、引き続き注目していきます。