製薬会社の動向と将来性を侍参謀が独自目線で解説するシリーズ第12弾です。
今回は大正製薬の特集となります。
「ファイトー イッパーツ」
誰もが一度は聞いたことのあるセリフではないでしょうか?
大正製薬といえばこのCMで一般消費者にお馴染みの企業です。2019年のラグビーワールドカップでも幾度となくCMが流れていました。
それでは、将来性を含め動向を探っていきましょう。
目次
大正製薬概要
2020年度第一四半期
売上高 750億円(前年比24.5%)
売上高(セルフメディケーション)564億円(前年比31.4%)
売上高(医薬)186億円(前年比7.3%)
営業利益 94億円(前年比12.8%)
経常利益111億円(前年比45.3%)
四半期利益 61億円(前年比-44.9%)
従業員 2,905人(単体)
平均年齢 45.0歳
平均年収 7,000~8,000千円
大正製薬ってどんな会社?
大正製薬はOTC(セルフメディケーション)を軸に、医療用医薬品も製造販売している製薬企業です。
創業は1912年に遡ります。石井絹治郎が大正製薬所を創業し、その後に現在の大正製薬へと社名を変更しています。
企業理念は “健康と美を願う生活者に納得していただける優れた医薬品・健康関連商品、情報及びサービスを、社会から支持される方法で創造・提供することにより、社会へ貢献する” とされており、医療・健康を通じた社会貢献を使命としています。
国内製薬企業では12位に位置しており、過去4年間の売上高(2017.3-2020.3)は2,600億円~2,900億円の間で推移しています。
セルフメディケーション中核事業に置いており、売上高の約8割を稼ぎ出しています。
主力製品は栄養ドリンクのDで売上の20%超を支えています。1960年代に誕生以来のロングセラー商品となっています。
セルフメディケーション事業は安定的な需要を掴んでいる一方、競争が激しく宣伝広告費が重なる
一方で医薬品事業は整形外科領域を中心にとした製品群で展開しています。骨粗鬆症領域では整形外科医からの認知度も高いと思われます。
医療用医薬品の開発力をみると、少数精鋭で行っているといえます。
元来OTCに注力していたこともあり、医薬品への開発資金規模も小規模なものになっています。
基本的には自社及び共同開発製品を販売しており、国内を中心に展開しています。
長期間をおいて新製品を発売している経験があり、医療用医薬品分野では今後の再編も起こるかもしれません。
コロナ禍の影響
2021年3月期は足元で影響を受けています。外出頻度が低下したことにより、栄養ドリンク需要が減り、さらに日常的な感染予防効果により風邪薬の需要減に繋がりました。
セルフメディケーション事業全体としては厳しい経営環境にさらされています。
人々の生活習慣が変わったことにより、健康関連商品の需要が大きく変わりました。
全体的に必要性が低下したといえます。当面はOTC市場にとって難しい局面が続くと予想されます。
それでも企業体力は非常に高く、長年無借金経営を続けています。さらに2000億円以上の現金を保有していることから、外部環境の悪化にも簡単に崩れることはないでしょう。
企業文化・組織体制
医療関連企業であることもあり、法令遵守の意識が非常に高いとされています。しかし、その意識が過度に強いといった声もあるようです。
経営層は同族経営であり、意思決定もトップダウンが強い傾向があります。
ベテラン社員が多く、純日本企業的な社風が根強いといえます。そのため社員を大切にする風土もあり、長年安定的に働ける環境があるかもしれません。
まとめ
大正製薬はOTC企業として長年No.1企業の座を守り続けています。一般消費者にも知名度の高い企業の一つといえます。
現在はコロナ禍により、主力製品も厳しい外部環境にさらされています。しかしながら、企業体力は盤石であり、簡単に経営が揺らぐことはないでしょう。
OTC事業の成長鈍化をかわし、今後の成長を目指す上では、医療用医薬品分野での開発力強化が避けては通れません。いかに有能な開発者を呼び込み、新規製品を生み出すかがカギとなるでしょう。