企業分析

【2021年7月更新:小野薬品工業】参謀侍がみた製薬会社の動向と将来性

製薬会社の動向と将来性を侍参謀が独自目線で解説するシリーズ第11弾です。

今回は小野薬品工業を特集します。

小野薬品といえば、何といっても画期的な免疫チェックポイント阻害剤を世の中に誕生させたことで有名だと思います。

将来はどうなっていくのか迫っていきます。

小野薬品概要

  • 2021年3月期
  • 売上収益 3,093億円(前年比5.8%)
  • 売上収益内訳(製品売上2,145億円:4.3%増 ロイヤルティ・その他947億円:9.1%増)
  • 営業利益 983億円(前年比26.9%)
  • 当期利益 754億円(前年比26.3%)
  • 従業員 3,560人(連結) 3,287人(単体)
  • 平均年齢  41.9歳
  • 平均年収 9,280千円

医療用医薬品を専業とした研究開発型企業です。歴史は長く、さかのぼること約300年前に大阪市の薬品街であった道修町に初代小野市兵衛が創業しました。

現在の小野薬品工業の冠を掲げたのは1948年となります。

企業理念はDedicated to Man’s Fight against Disease and Pain(病気と苦痛に対する人間の闘いのために)とされており、武士道を感じさせる熱い思いを感じます。

企業規模としては製薬会社の中では中堅企業に位置しておりますが、近年急激に売上を伸ばしています。

数年前は糖尿病治療薬や抗リウマチ薬が主軸でしたが、抗PD-1抗体を世界で先駆けて発売したことにより独自のポジションを確立したといえます。

決算発表資料より筆者作成

2020年度には初の売上収益3000億円に到達しました。

21年度もそのモメンタムが続く見込みで、売上収益(予想)は3,500億円(13.2%増)となっています。

主な増加要因は抗PD-1抗体製剤であり、次いで糖尿病治療薬が適応拡大も追い風となり大幅な増加が予想されています。

近年医療用医薬品の国内市場は縮小傾向にあるなかで、二桁成長は業界ではトップクラスの成長となります。

抗PD-1抗体を基軸とした成長は当面期待できます。今もなお、数多くの治験が走っており、本年中にも6つの適応追加申請を行う計画となっています。

度重なる薬価の大幅引き下げの苦境を乗り越え、さらなる伸びが期待できそうです。

拡大再算定がなければ今頃4000億円企業となっていたでしょう。

ただ一方で、一製品への依存度が年々高まっていることにも注視しなければなりません。

医薬品ビジネスにはいずれ特許切れの壁がやってきます。多くの薬剤がこの大波に飲み込まれています。

近年ではエーザイや大塚製薬が大型製品のパテントクリフ(特許切れの崖)にぶち当たり、何年もかけて持ち直しています。

ただ現状は抗体製剤の開発は難しく、バイオシミラーを使う利点も乏しくそれほどまで普及していません。この点は政策により大きく左右されるため、予測が難しいといえます。

※バイオシミラーとはバイオ医薬品の後発品にあたるもの。通常の後発品とは異なり、第三相試験が必要とされる。

次の時代を支える自社開発製品を生み出したいというのが本音だと思いますが、研究開発情報をみると大型化が期待させる製品は今のところなさそうです。

新型コロナウィルスの治療薬も開発しているようです。

向こう5年は安泰が続くと予想されますが、その先は未知数といったところでしょうか。

企業文化・組織体制

企業文化はいわゆる内資系の気質が強いようです。また体育会系の要素もあるようです。平均年齢も比較的高いので、ベテランの方々が経験してきた伝統が残っていると予想されます。

年功序列も根強いようですが、それが悪いとも言い切れません。社内の雰囲気はよく、温かい方が多いとも聞きます。社員を大事にする気風があるようなので、長期間腰を据えて働きたい方にはマッチした会社といえます。

近年は中途採用も増やしているようなので、少しずつではありますが多様性を取り入れ始めており、働き方改革も進めて時代に適合していく意思を感じます。

組織体制はプライマリーとオンコロジーに分かれており、両MR合わせて1100人程となります。

ワークライフバランスも年々改善されてきているようで、有休もとりやすくなっているようです。

私の個人的なイメージでは、医師との関係性構築を重視しており、できるだけニーズに応えられる働きをしている印象があります。

競合他社と比べても日本的な文化の企業だと感じます。

小野薬品ヘルスケアの設立

2021年2月に子会社で小野薬品ヘルスケアを設立しました。

現時点での情報では、事業内容はヘルスケア分野における健康食品・機能性表示食品事業とソリューションサービス事業と公表されています。

これまでの治療領域から、未病・予防領域までをカバーし新たなソリューションを開発していくものと思われます。

初期体制は4名でスタートしており、実際にはこれから新規事業を開発していく段階にあるといえます。

多くの製薬企業では主力の医薬品事業から事業ドメインの拡大を目指しており、その潮流に乗った動きと捉えることができるでしょう。

この先の経過を追っていきましょう。

まとめ

  • 抗PD-1抗体の誕生により近年大幅に業績を伸ばしている
  • 向こう10年は安泰が予想される
  • 安定的に働きたい人にはマッチしている