※この記事は2020年11月に更新しています。
皆さんビールは好きですか?何の種類が好きですか?今回はキリンビールの話です。
ではなく、製薬会社の協和キリンについて解説していきたいと思います。
親会社はまさにキリンビールで、会社の懇親会では他社のビールを飲めないなんて噂も・・
ではいきましょう。
目次
協和キリン基本情報
2020年度第3四半期結果
売上収益 2,340億円(対前年85億円増)
コア営業利益 507億円(対前年49億円増)
四半期利益 375億円(対前年188億円減)
従業員数 5,262人(連結) - 人(単体)
平均年齢 42.8歳
平均年収 856万円
日本市場においては、主力製品のエリスロポエチン製剤がAG(オーソライズドジェネリック)切替えや、新型コロナウィルスの影響もあり-125億円となっています。
しかしながら、北米では172億円の増収、EMEA(欧州等)で41億円の増収、アジア/オセアニア地域では18億円の増収となり全体では85億円の増益となりました。
国内での苦戦が続いています。
当面は国内市場は耐える時期が続くかもしれません。
海外での成長が協和キリンの将来性を握っているといえるでしょう。
協和キリンってどんな会社?
キリングループの傘下に属しており、医療用医薬品事業を主体としています。重点カテゴリーを腎・免疫アレルギー・がん・中枢神経に置いています。
国内製薬会社売上ランキングでは10位に位置しており、2019年度国内売上高1865億円、海外売上高1192億円(39%)で構成されています。
2019年4月にグローバルマネジメント体制を再構築し、日本・EMEA・北米・アジア、オセアニアの4地域のマトリクス型で運営しています。
協和キリンも例にもれず、コロナ禍による医療関係者とのコンタクトが減少しています。
デジタルプラットフォームのエムスリー社「my MR君」を一部導入しました。
比較的ベテランも多い企業ですので、新たな方法をどのように社内に浸透させるか模索していくことになるでしょう。
協和キリンの特徴とアップデート情報
2007年にキリンホールディングスによるTOBによって協和発酵工業を買収した。その後キリンファーマとの合併により誕生。2019年にはグローバルでの社名を統一し協和キリンとなっています。
バイオケミカル事業は2019年4月に事業譲渡により連結から外れましたが、将来性への影響は軽微なものと見込まれます。
長年培ったバイオテクノロジーの技術を生かした製品開発に強みを持っており、主力製品の特許切れに際し、製薬業界初のバイオセイムを発売しました。またウルトラジェニクス社の販売網も活用しグローバルでの展開を狙っています。
今年の8月に新薬の腎性貧血治療剤(HIF-PH阻害剤)を2番手グループで発売しましたが、同剤のカテゴリー全体に市場は慎重な姿勢をみせています。
2020年9月に日本腎臓学会より、HIF-PH 阻害薬適正使用に関する recommendationが発表されています。
当レコメンデーションの中でHIF-PH阻害剤は「従来の造血系に特異的に作用する注射薬である erythropoiesis stimulating agents (ESA) と異なり、全く新しい作用機序を有し、経口薬で全身性の作用も伴う可能性がある腎性貧血治療薬」と紹介されています。
日本が世界に先駆けて発売したカテゴリーの薬剤であり、この先の複数の同系統の薬剤が発売されることが見込まれています。
全身性の作用が伴う可能性から、悪性腫瘍への影響も危惧されているようです。
そのため慎重に治療を開始していく中で、エビデンスを構築し適正使用に努める必要があると学会では判断されたようです。
過去には糖尿病治療薬のSGLT2阻害剤が糖尿病学会からの適正使用を促す声明が上がったことにより、糖尿病治療剤としての想定されていた市場規模に至らなかった事例があります。
それほど、関係学会からの声明は影響力があるわけです。
長年透析領域でプレゼンスを高めてきた協和キリンではありますが、大きな波にはあらがうことは難しいでしょう。
HIF-PH阻害剤でこの先大きく成長できるかというと、簡単ではないと言わざるを得ないのが現状です。
参謀侍の目:協和キリンの動向と将来性
長年の主力製品の特許切れの影響は今のところ大きな影響は受けていないと思われます。
その理由はバイオ医薬品の特性上、薬価・制度・品質面で医療機関のメリットが少ないことが影響しています。
本年度の目標売上が先発品、AG(オーソライズド ジェネリック)計340億円としているがここは必ず達成させなければならないでしょう。
※第3四半期時点で289億円に下方修正となっています。
日本市場における向こう三カ年の動向を研究開発の側面からみると、耐え忍ぶ時期となりそうです。進行中の開発パイプラインはあるが、その多くがフェーズⅡもしくはフェーズⅢの初期段階にあるためです。
2020年度第3四半期の結果をみると、国内売上は125億円の減収である一方で、北米にて172億円の増収となり事業全体としては成長をしています。
その結果海外売上比率が36%から47%に引き上げられています。多くの製薬会社が海外売上比率を上げている中で、協和キリンも同様に海外戦略を拡大しています。
COVID-19の影響は医療機関への受診、外出抑制があり花粉症治療薬へ一部影響があった程度で軽微な影響とみてとれる。金額にしては数億円でしょう。
→結果としては抗アレルギー剤(内服・点眼計)で約50億円の減収となりました。コロナ禍による通院控えが医薬品市場全体に影響がありましたが、中でも季節性の影響を受けやすい抗アレルギー市場は大きな影響があったといえます。
国内市場に目を向けていると、厳しさに着目しがちですが、海外戦略も含めた視点で協和キリンの将来性を検討すると少し異なったことがいえそうです。
それは株式市場に表れています。
実は2020年9月には上場来高値の3,060円をつけました。
また直近(11月15日現在)でも高値を更新する勢いがあります。
なぜマーケットは協和キリンへ好感を持っているのか?詳しくは専門家が知るところですが、一要因としては海外売上が今後も伸び国内の減少分をカバーし成長を遂げると予測されているのではないでしょうか。
特に北米およびEMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)で直近の成長を支えています。
同じ準大手カテゴリーの田辺三菱製薬や大日本住友製薬と同様に年々海外売上比率を高めており、それが成功の兆しをみせています。
あとは国内市場での起死回生を待ちましょう。
参謀侍の紹介>
個人向け営業からキャリアをスタート。その後ヘルスケア業界にキャリアチェンジしMRを10年間経験。メンバーの育成やプロジェクトの運営などを行う。経営知識を生かしヘルスケア企業の分析や将来の動向を独自路線で読み解く。
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