MedTech journeyと題して今注目の医療機器開発企業、医療系ハイテク企業の現在と将来性をトリプルと一緒に見て行きましょう!
今回はシスメックス株式会社です。
※MedTech:Medical(医療)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、IoTなどのテクノロジーを医療に活用する取り組みも含めた言葉
目次
シスメックスとは
業績
企業概要(2021年度3月決算)
売上高 3,050億円 1.0%UP
営業利益 517億円 △6.3%
当期利益 331億円 △4.9%
従業員数 8,445人(連結) 2,175人(単体)
平均年齢 41.4歳 平均年収 739万円
参考:シスメックス株式会社 会社ホームページ
https://www.sysmex.co.jp/index.html
シスメックス株式会社と言われてどんな会社かイメージできますか?現場に出入りしている皆さんはシスメックスの営業マンの車を目にする事も有るでしょう。知る人ぞ知る優良企業シスメックスの現在と将来性を予想して行きましょう。
改めてシスメックス。一般の方にはイメージが沸き難いのでは無いでしょうか。そんな世間のイメージ不足を知っての事かシスメックスのIR情報サイトは、とてもわかり易くデザインされています。その結果見せ方が評価され、2019年IR優秀賞も獲得しています。
参考:シスメックス IR情報サイト
https://www.sysmex.co.jp/ir/individual-investors/index.html
本社は神戸市。1968年に設立された創業50年程度の企業です。血球検査装置と検査試薬の提供がスタートです。
数字で見ると魅力が明らか
★検体検査領域で世界7位。ヘマトロジー領域グローバルシェアNo.1
★世界190カ国で事業展開
★海外売上比率80%超え
★女性マネジメント率21.5%
検体検査で世界7位。RocheやAbbottなどの欧米系企業の中で、アジアに本拠地を置く企業で唯一善戦しています。
参考:数値でわかるシスメックスhttps://www.sysmex.co.jp/corporate/understanding-sysmex/by-the-numbers_old.html
前述の通りですがヘマトロジー(血液分析)分野においてグローバルNo.1企業です。事業セグメント別売上高比率で見ると、ヘマトロジー・尿分野(69%)、免疫・生化学・凝固分野(22%)、ライフサイエンス分野(4%)、その他(5%)。地域別売上高で見ると米州、EMEA(欧州・東欧・中東)、アジア地域と均等に分散されていおり、海外比率は85%です。
コアビジネスであるヘマトロジー・尿分野と免疫・生化学・凝固分野での収益力拡大と共に、ネクストコアビジネスと位置付ける遺伝子検査、医療用ロボットの販売などへの投資を強化しています。
TOPIC
国産 手術ロボット
2013 年、産業用ロボットのリーディングカンパニーである川崎重工と、検査・診断の技術を保有し、医療分野に幅広いネットワークを持つシスメックスの共同出資により、医療用ロボット開発に向けたマーケティングを行う会社としてメディかロイド株式会社が設立された。
21年4月から「hinotoriTM」の販売本格化し、世界最大のシェアを持つ手術支援ロボットの先駆けとなった米インテュイティブ・サージカル製「ダヴィンチ」への挑戦が始まる。AIとの連携で遠隔手術市場は拡大して行くと見られている。
日本人ならではのきめ細かな設計
・川崎重工業の50年以上の歴史を持つロボット技術
川崎重工は、1969 年、日本初の産業用ロボットの国産化に成功し、以来、日本のものづくりの発展
とともに、各方面のお客様からの多大なる支援のもと、産業用ロボットのパイオニアとして高品質、
高性能のロボットおよび付加価値の提供が可能
・スメックスの医療分野におけるネットワークおよび知見
検体検査に必要な機器・試薬・ソフトウェアの研究開発から製造、販売・サービス&サポートを一貫して行っており、190 以上の国や地域の医療機関へネットワークを持つため、手術ロボットのサポートの関しても強みを発揮できる。
リキッドバイオプシーによる個別化医療
リキッドバイオプシーと聞いてピンと来ますでしょうか?
リキッドバイオプシーとは、血液や体液中に流れ出た病気の患部のごく微量な成分を、高感度に分析する検査方法です。従来の、腫瘍など組織の一部を採取する検査に比べ、患者さんの身体的・精神的・経済的負担が軽減されることが特長です。また、検査機会の拡大、投薬など早期の治療方針確定につながる可能性があるなど、個別化医療を推進する技術として注目されています。
シスメックスは、2016年、エーザイ株式会社とアルツハイマー型認知症診断の実現に向けて業務提携を締結し、血液検査で病態に影響を及ぼすとされている微量タンパク質の構造異常や量を検出し、早期診断および治療を可能にすることを目指して共同研究を進めています。
近年は予防医療や早期発見に注目が集まっています。例えば「血液一滴で早期のがん発見」と言うキャッチコピーを見聞きしませんか?
血液を使いステージ0での早期発見が注目されつつ有りますが、まだ自由診療として一回で数万〜数十万もするとされ、ユーザーは極々一部の人に限られます。一般化される為には、病院やクリニックで検査をした検体を特別なラボでゲノムプロファイリングし、高い精度で検査結果をフィードバックする必要が有るでしょう。その様なシステムを大規模に行う意味でも、ベースにヘマトロジー領域で培った医療機関との関係性、ラボシステムなどが大きな差別化になるかもしれません。
鳥の目 虫の目
多様な専門性を持つ研究者集団
売上高でもこの10年で3倍にまで成長しており、上昇傾向は今後も続いていますがその背景に注目すると人材の多様化が上げられます。
シスメックの従業員の中でも未来を担う研究者は、ヘルスケア業界では特徴的な研究者の集団です。バイオ系、ソフトウェア系、電気系、流体系、光学系、などが集まっています。機器、試薬、ソフトウェアの自社開発を可能にする為に、医療の専門家以外の多様な人材が集まる組織で有る事が注目すべき点でしょう。
ヘルスケア業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されていますが、医療に精通する人材と、医療にはこれまで無かった技術を持つ人材が融合する事で新たな価値が生まれるのかもしれません。本当のDXはシスメックスの様な企業から動き出すのかもしれません。
現場フォロー体勢
医療現場に置いても医療スタッフからの信頼は厚く、特に検査技師さん達からは「良くフォローに来てくれる」、「細かい事でも即座に対応してくれる」などの検体検査を行う医療機関とそのスタッフ達との関係性が漏れ聞こえて来ます。
医療は益々ハイテク化して行くと思いますが、医療現場を支えるのは医療従事者の皆さんです。その点はこの先も変わりません。
医療現場との関係構築は簡単な事では無いですから、シスメックスが培って来た医療従事者との関係性が今後の最大の差別化のポイントなのかもしれません。