MedTech journeyと題して今注目の医療機器開発企業、医療系ハイテク企業の現在と将来性をトリプルと一緒に見て行きましょう!
※MedTech:Medical(医療)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、IoTなどのテクノロジーを医療に活用する取り組みも含めた言葉
目次
最新TOPIC
(株)iLAC「新型コロナウイルスの全ゲノム解析サービス」
島津製作所および伊藤忠商事の出資する(株)iLACは、4月1日から新型コロナウイルスの全ゲノム解析受託サービスを開始したとの事です。ゲノム配列情報から得られたウイルス変異の情報と感染者の臨床情報を組み合わせると,新型コロナウイルスの病原性や感染性などのメカニズムを解明する手がかりになるのですが。従来のゲノム解析には手作業による前処理が必要で,時間がかかるうえ,検体取り違えや手技によるデータのばらつきなどが課題でした。
(株)iLACはヒト型汎用ロボット技術による自動前処理システムを使用することで,精度を約40倍に高め,約30倍のハイスループット化を達成しました。リスクを大幅に低減しながら一日当たり6000検体の解析が可能で,変異株の感染状況の把握と新たな変異株の検出が迅速に行えます。もし変異株が検出された場合には,島津製作所がそれぞれの変異株に対応したPCR検査用試薬「プライマー/プローブセット」を開発し,変異株の感染状況や拡大動向の把握に貢献します。
新型コロナウイルスの感染拡大防止,安心・安全な社会の実現に大きく貢献してくれそうです!
ともあれ”ヒト型汎用ロボット”にワクワクするのは私だけでしょうか。笑
参考:島津製作所 ニュース
島津製作所とは
決算内容(2019年度決算)
売上高 3,854億円
営業利益 418億円
当期利益 317億円
従業員数 13,182人(連結) 3,456 人(単体)
平均年齢 43.0歳 平均年収 821万円
2019年度業績は2019年11月までは順調に業績を伸ばしていましたが、新型コロナウィルスの影響で2020年1月〜3月で売上が低迷した影響が出ています。
島津製作所の特徴
島津製作所の礎は島津源蔵と言う技術者によって築かれました。島津源蔵は親子で2人存在し、初代と2代目の島津源蔵により島津製作所は発展します。
1875年に初代島津源蔵が教育用理化学機械製造で創業し、その後1909年には日本初の医療用X線装置を完成させました。その約100年後の2002年には田中耕一氏がノーベル化学賞を受賞、質量分析のための「ソフトレーザー脱離イオン化法」。これにより質量分析でタンパク質を研究する道を開きました。
事業セグメント別売上高比率は、計測機器(66%)・医用機器(18%)・航空機器(7%)・産業機器(12%)・その他(2%)ですが、計測機器の33%はヘルスケア向けのため、医療関連事業が島津製作所の主力事業と言えます。海外売り上げ比率は50%で北米(13%)・欧州(8%)・中国(18%)・その他(12%)
重点機種に位置付けられている、液体クロマトグラフ・質量分析計・ガスクロマトグラフが、日本・北米・インドで好調に推移するなど、業績好調で、昨年まで6期連続で増収増益が継続しています。このお家芸とも言える分析機器が島津製作所を牽引してきた中核技術です。
過去のTOPIC
島津製作所は計測機器が現在も中核事業ですが中でも液体クロマトグラフを成長の軸として考えています。
クロマトグラフィー技術
クロマトグラフィーとは?
気体、液体、などの混合物を分離、検出する分析法です。例えば、香水、医薬品の芳香、薬効を表するためには、試料に含まれる特定の成分の量を知る必要があります。対象となる物質中に含まれる各成分を分離し、含有量又は含有比率を知る方法としてクロマトグラフィーは良く利用されています。
新型LCの可能性
高速液体クロマトグラフィ分析装置を2019年に新たに導入していますが、超早期診断・予防診断の実現、iPS細胞などによる再生医療開発に活用される高性能で省エネ、分析者の技量に左右されない分析装置に成っています。
新たな事業体制を構築
2020年10月には社内のコア技術や新技術を使い事業化を推進する部門としてスタートアップ・インキュベーションセンターを新設しました。既存の事業体制が受け皿にならない場合は、新たな事業体制を構築できる様にした対応です。
新しいアイデアを発想してもそれをすくい上げて、新しい製品や事業にもっていく仕組みと位置付けられており島津製作所が大切にするディープテックを軸に考えられています。
ディープテックとは革新的な技術を基礎としてその成果が社会課題解決に大きなインパクトを与えるもので、その確立には、それなりの投資や期間が必要となります。現在、東京大学と共同研究中の光格子時計はディープテックの一事例です。
参考:光格子時計
鳥の目 虫の目
オープンイノベーション
オープンイノベーションに向けた拠点づくりです。海外主要地域にイノベーションセンターを作り、現地の顧客ニーズを収集し、アプリケーションシステムなどの開発を行っています。また国内では、2019年6月にヘルスケアR&Dセンターを設立、さらにSHIMADZUみらい共創ラボ、東京イノベーションプラザといった研究開発の各レイヤー(製品開発、研究、応用開発)での拠点設立も進めています。
「生体高分子の質量分析法のためのソフトな脱離イオン化法」を開発したことにより2002年にノーベル化学賞受賞した田中耕一さんが有名ですが、一民間企業からノーベル賞受賞者を排出する技術者のレベルの高さが島津製作所の強みですが。
今後は研究成果をいち早く事業展開してより多くの世界の課題解決につなげる事に注目が集まっています。