ここ半年間日本のジェネリック医薬品の信頼を揺らがすニュースが続きました。
この記事を読んでいる方なら知っている人も多いでしょう。
小林化工と日医工が共に品質管理問題が確認され業務停止命令が下されました。
これによって、社会的信用は失墜するとともに経営へ大きなダメージを受けることになるでしょう。
この問題の本質はどこにあるのか?
2つの事例と共に考えていきたいと思います。
目次
どのような問題だったか?
まずは小林化工と日医工に何が起きたのかを確認しましょう。
小林化工は福井県あわら市に本社・工場を置く後発医薬品メーカーです。
今回の問題は小林化工が製造していた爪水虫治療薬などに睡眠導入剤が混入し、200人以上の患者が被害を受けました。
製造工程で作業員が原料を混合する際に他の原料と取り違え睡眠導入剤を混入させてしましいました。
結果として通常使用する最大投与量の10倍もの用量を接種することになってしまいました。被害者の中には過量投与でお亡くなりになった方もいます。
国の承認書とは異なる工程で製造をしたことにより、この問題が発生しています。
日医工は富山県富山市に本社を置く日本最大手の後発医薬品メーカーです。
富山第一工場にて、品質試験で不適合とされていた製品を、承認とは異なる方法で適合扱いとし出荷していたことがPMDAの抜き打ち検査で明らかになりました。
なぜ起きたのか?
両社ともに製造工程での不正を長年行ってきたことが発覚しました。
小林化工は長年国の承認書とは異なる製造工程や二重帳簿の作成が横行し、日医工も少なくとも10年以上前から出荷試験で不適合となった製品を、認められていない方法で再試験を行い適合扱いしてきたとされています。
もっとも、小林化工は過去4年間で5件の品質管理への指摘を受けています。
過去には発がん性物質が含まれていたこともありました。なぜこのように幾度も重大な欠陥が生まれているのか。再発防止策が適切に打たれていたとは思えません。
同社社長はヒューマンエラーであったと弁明をしていますが、果たして単に作業員一人のミスであるといえるのでしょうか。
製造工程の手順を守っていなかった上に、安全性チェックが適切に行われていなかったことが考えられます。
本来であれば、品質の確保を最優先して製造がおこなわれる必要があります。しかし、品質よりも利益を重視されていたわけです。
非常に根の深い問題が潜んでいると思われます。
鳥の目虫の目
生命に関わる産業であるにも関わらず、このような重大な欠陥が生じていたことは日本のジェネリック医薬品への信頼が揺らぎかねません。
多くの医薬品メーカーは徹底した品質管理の元、製造されていますが、もしかしたら他にも管理が甘い企業が眠っているかもしれません。
ここ数年国策の後押しもあり、ジェネリック医薬品の市場が急拡大しました。医薬品の約80%を占めるまでに至っています。
膨らみ続ける医療費の抑制策として、特許切れの医薬品は、ジェネリック医薬品を服用することを推奨されています。
これを機会とし後発医薬品メーカーは急速な成長を遂げてきました。
業界1位である日医工はスケールメリットを生かし、幅広い製品ラインナップを揃え競争優位性を確保しています。
年2回の薬価収載に合わせて各社一気に発売をします。いかに最短の発売に間に合わせ、一気に市場を制覇するか超短期での勝負となります。
参入と撤退を繰り返し、効率性を重視する側面が強くなってきています。
ジェネリック医薬品も年々薬価が下がり、薄利多売の商売になりつつあります。
実際にジェネリック医薬品メーカーの利益は5%前後であり、先発医薬品メーカーと比べても低い水準となっています。
大型製品の発売にあたっては、到底考えられない価格で医療機関との取引がされることもあります。
開発から販売に至る全ての工程で、いかに無駄を減らし利益を確保するかが、知らず知らずのうちに重要視されていることが推測されます。
表向きには患者さんのためにとうたっていますが、私企業であることから利益を優先してしまっている実情もあるでしょう。
表向きに品質度外視で生産性を上げる指示がなされている可能性は低いかもしれません。しかしながら、経営層心の中ではどのように利益を上げるか、そのためには多少の不備は見てみぬ振りをすることが、暗黙の了解として成り立っている可能性があります。
意図した組織的問題が潜んでいるといえるでしょう。
原因究明徹底と改善をしていただきたいと思います。