ヘルスケア業界に身を置くマーケター”トリプル“が様々なテーマに対して独自目線で分析して行くシリーズです。
前回は、MR(医薬情報担当者)をモデルにしたスモールマーケッターの3要素の「分析」についてご紹介しました。いよいよ最終回です。では早速続き行きましょう!
みなさんが仕事をして行く中で、「PDCAサイクルを回そう」なんて良く言われたり、聞いたりしませんか?PDCAを回す中で自分が実行(D)した事が上手く行っているかどうかを検証(C)する時、皆さんは判断基準を持っていますか?
売上(実績)で判断している。上司の評価で判断している。顧客が喜んでくれているかどうかで判断している。自己満足で判断している。様々有って良いと思います。
ただ上記の表面的な基準の場合、どの様な状況でも応用できる再現性が弱く。売れる仕組みを作るマーケーターや、組織を運営するマネジメントになると苦労するかもしれませんね。
スモールマーケターの3要素 10項目
効果判定基準 3つ
その8 インサイト(欲求)
顧客のインサイトが満たされているかどうかを基準にします。
インサイトの意味は洞察、潜在ニーズなどとも言われますが。スモールマーケターの3要素の情報収集編でも医療従事者の脳内情報収集の必要性も提唱しましたが、「人の心を動かすヒント」がインサイトに隠れています。医師の場合ならば、例えば、患者満足、技術、知識、出世、名誉、お金、など色々有るでしょう。ターゲートの医師が持つ欲求を満たせているかどうかが最初の効果判定基準です。
筆者のケースですが
とある内科医がご自身の長いキャリアを考えて腫瘍内科専門医を目指す事を志されている事を情報収集から把握しました。その医師は腫瘍内科専門医に成る為に臨床で忙しい傍、自身の研究するテーマで学術論文を発表する事を目標にしていました。分析してこの医師の場合優先度が高いアクションとして考え、MR時代の筆者はその為に社内ルールで出来る限りのサポートを本社を巻き込んで実行する事でその医師のインサイトを満たすアクションを取りました。
その結果医師は論文を作成する為に当時担当していた自社製品への研究を積極的に行って頂き、症例を積み重ね実際に論文化まで行きました。
人は誰でも願望が有るし、欲求が有るものです。その支援をしてくれるならばお返しをしたいと思われるかもしれません。感動の法則がそこで起こるチャンスが生まれます。
その9 エンゲージメント(受入)
ここで言うエンゲージメントは自社の投げるメッセージが顧客に受け入れられているかどうかです。例えば自社製品Aの適応の有る疾患のアンメットニーズがCKD症例に対する薬剤選択だとしましょう。
そのCKD症例に対する薬剤選択基準として排泄経路が胆汁中排泄で有る事が大切だと言うメッセージを投げた時に、その意見に強く合意を得られるのか、不合意なのか?の様な事です。
この様なキーメッセージを複数用意してその自社のメッセージに強く合意してくれる医師ほどエンゲージメントが強い顧客(医師)と成ります。エンゲージメントは一回で終えるものでは無く経時的に変化を追うものです。
その10 バリュープロセス(価値)
最後にバリュープロセスですが、インサイトとエンゲージメントにより自分のアクションが認識変化(パーセプションチェンジ)に繋がっているか判断します。
しかし、認識変化が以前に比べ好転しているにも関わらず行動変化には繋がっていない事が時として起きます。その場合に顧客(医師)の行動変化を判断する基準として価値基準が大切です。
バリュープロセスの5ステップ
認知:製品の事を知っている→検討:製品を使うか考えている→試用:製品を使ってみる→優先:製品を積極的に選択する→支持:製品を評価し良さを広める
先ほど例に出した自社製品Aをファーストチョイスとして支持してくれる医師はA製品に大して価値を感じているから実際の処方行為に出ます。A製品に対する認識変化は起きていても行動変化に出ない顧客(医師)には、営業としての効果的な交渉とクロージングが大切に成ります。
最後に
ここまで8回に渡って配信して来た「売れる営業編」ですが、顧客を感動させて行動変化(購入してもらう)を促す。その単純な一つの目的の為に様々な営業さんが切磋琢磨している中で、本シリーズは筆者の経験と多くの営業さんの行動分析から一つのアプローチを提唱しているに過ぎません。
しかしながら、これがヘルスケア業界でなくても、BtoBでもBtoCでも普遍的に通用する理論だと自信を持っています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で、人だから出来る事の一つが共感する事です。共感するから相手を感動させられ、感動させられるから相手が行動に移してくれると信じています。営業という仕事はDXだからこそ輝きを増すのではないでしょうか。
※シリーズ全体を通して細かい手法は記載していません。もし、具体的な実践的な方法にご関心が有る方は個別にご連絡ください。
トリプルの紹介
ヘルスケア業界でMR、新規事業開発、セールスマーケティングに従事。数多くのセールスマンとの関わり、MR研修やOJT等通じて実践的なトレーニングの経験も持つ。