シリーズ第17回目です。
今回は株式会社ツムラを特集します。
※このシリーズでは様々な医薬品メーカーの今と将来を探っていきます。
現在多くの製薬企業は西洋医学に基づき医薬品の開発を行っています。
現代においては低分子化合物からバイオ医薬品、さらには新たなモダリティによる治療が日々誕生しています。
そうした中にあって、中国医学をルーツとする漢方薬による治療は特殊なものだと思われるかもしれません。
今回は漢方薬のリーディングカンパニーであるツムラとはどのような企業なのかを紐解いていきたいと思います。
目次
株式会社ツムラ概要
2020年度 第三四半期決算結果
売上高 994億円(対前年比4.5%)
営業利益 175億円(対前年比8.7%)
経常利益 181億円(対前年比 8.8%)
従業員 3,840人(連結)2,534名(単体)
平均年齢 43.7歳
平均年収 810万円
※2020年 第三四半期決算発表資料を参照
当期は中国子会社の新規連結が寄与し、対前年比4.5%伸長しています。
医療用漢方製剤は0.5%の伸びがあり、コロナ禍においても影響は軽微であったといえます。
ツムラの歴史
ツムラは津村重舎氏が1893年に津村順天堂を創業したことが始まりです。
西洋医学が台頭する中でも、ツムラは和漢方を地道に浸透させ続けた結果、さらなる拡張を目指し1936年には株式会社に組織変更をしました。
1974年に医療用漢方製剤の販売を開始し、76年には33の漢方製剤が薬価基準収載となりました。
その後株式公開を果たし、1982年には東証一部へと乗り換え名実ともに漢方薬のリーディングカンパニーとして現在に至っています。
ツムラの将来性
現在ツムラは第3期中期経営計画の真っ只中にあります。
長期経営ビジョンでは “漢方”のツムラ “人”のツムラ “グローバル・ニッチ”のTSUMURAを掲げており、漢方によるイノベーションを起こすことを目指しています。
日本国内市場での拡大を目指す一方で、中国市場での基盤を築いていくことをマイルストンに置いています。
日本・中国市場ともに高齢化が進んでいく中で漢方薬も同様に成長が見込めるでしょう。
ではツムラが主戦場としている医療用漢方製剤市場は年々拡大しています。
2010年度は1,200億円でしたが、2019年度には1,583億円まで規模が増加しています。
ほぼ前年を割ることがなく、順調に広がりをみせていますが、ツムラの強さはシェアに表れています。
2010年度には84.0%であり、2019年度は83.5%と過去10年間不変の地位を築いています。
ツムラの成長がほぼそのまま市場成長性に反映された結果といえます。
この先も漢方薬市場では独占的地位は簡単には揺らがないと考えられます。
それでも医療用医薬品に占める漢方製剤の割合は1.5%程度です。
まだまだ拡大余地は残されているとも捉えられますが、機会は中国の方が大きいとみています。
中国では2016年に「健康中国2030計画綱要」が発表され現代医学と中国医学の双方を重要視し、高齢化社会に立ち向かう指針が発表されました。
また中医薬(≒漢方薬)の原料である生薬の需要はH15からH28にかけて年間約20%の伸びが報告されています。
今後のさらなる成長も見込まれていることから、ツムラも中国市場でもチャンスを掴んでいきたいところです。
2021年までに地盤を固め、2027年の海外売上高比率50%以上の達成を目指しています。
鳥の目虫の目
この記事を読んでいる方々の中にも漢方を服用した経験はいるのではないでしょうか?
おそらく多くの場合は風邪で病院にいったときに処方されるケースが多いと思います。
一般用でも風邪の引き初めには葛根湯を勧めるCMが流れており、身近なものとして感じられます。
ただ、多くの医師は西洋医学による医療行為を行うことが一般化されており、漢方薬を好んで処方する医師は少数派に留まっています。
現代社会においては、年々科学的根拠に基づく診断・治療が世界的に強く求められてきています。
エビデンス無きものに価値はない、とまでは言いませんがそれだけ重要視されていることは事実です。漢方薬のさらなる成長のためには、今後科学的な立証をどれだけだせるかがカギとなるでしょう。
漢方薬によって助かった患者は数多くいることは確かですし、必要な治療方法だといえるでしょう。
日本初の漢方薬メーカーとして、世界で活躍することを期待しましょう。