ヘルスケアニュース

【2021年最新】オンライン診療最前線

近年BtoBからBtoCなどのビジネスシーン、はたまたプライベートのシーンまでオンラインを介したコミュニケーションが一般化しつつあります。

医療においても人口減少、超高齢化社会を迎えるにあたり、緩やかなスピードではありましたがオンライン診療の標準化を目指していました。

そのような背景の中で、コロナ禍により一気に注目度を上げたことは言うまでもありません。

2021年6月現在では時限的措置として初診よりオンライン診療が可能となっています。

このまま恒久的にオンライン診療が誰でもどんな場合でも可能となるのか、現在と未来をみていきます。

オンライン診療は本当に普及しているのか?

一時的な普及の伸びをみせるも足元では停滞がみられる

2020年3月に初めて発令した緊急事態宣言により、実施可能医療機関数及び実施割合は一時的に急激な伸びをみせました。

しかしながら、宣言が終了した2020年6月には伸びが鈍化し、直近の2021年4月にかけては僅かな実施可能医療施設登録件数の伸びとなっています。

感染予防の観点から以前よりも普及が進んだともいえますがその影響は限定的であり、本来オンライン診療が持つ価値を発揮できていないといえます。

出典)第15回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会 令和2年5月31日 資料1-2

それに加え、本来の意味であるオンライン診療を実施している割合はかなり低い状況にあります。

次の図で示している通り、多くが電話による診療がオンライン診療とみなされています。

これは発熱などの症状がありコロナウィルス感染を懸念する患者が電話により、一次対応を求めているためではないかと考えられます。

つまり実質的に通信機器を用い画面を通じたオンライン診療は全く広がりをみせていない可能性が高い訳です。

出典)第15回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会 令和2年5月31日 資料1-2

なぜ思うようにオンライン診療が普及しないのか?

ここではオンライン診療が一般化するための障害を3つの視点から考察していきましょう。

医療提供者の視点

医療機関側ではオンライン診療を行うためのインセンティブが欠けることが普及の障壁となっています。

まず企業の売上にあたる、診療報酬が対面での診療に比べ著しく低いことが上げられます。

仮に従来と同じ医療収益を上げるとするならば、倍以上の患者を診なければなりません。医療圏を全国に広げられるとはいえ、集患をするのは非現実的です。

またオンライン診療をするにあたっての準備に時間を要することも原因の一つです。予定時間に合わせてパソコンを立ち上げ、患者がアクセスするのを待ちます。慣れない準備に時間を要し、一人の診察を終えるのに対面よりも時間が掛かることもあるでしょう。

同時に処方箋の発行手続きや、支払いをどうするか様々な問題が発生しています。

クリニックでは高齢の医師も多いため、機器を使いこなせないといった事例も珍しくはありません。

コロナが落ち着けば、また患者が戻ってくるだろうと期待したくなる気持ちも分からなくはありません。

患者側の視点

患者からみた時にはどのような問題があるでしょうか。

本来恩恵を受けやすいのは、生活習慣病などの慢性疾患で定期通院している患者です。

とりわけ、その多くは高齢者となりITリテラシーが追い付いていない年齢層の方々になります。

当然PCやスマートフォンを使いこなせる方は少数派であり、介助者がいなければ難しいわけです。

さらには、対面での診療による安心感を得たい方も少なくはないことでしょう。

いかに簡単に対面と同等な環境を整備できるかが課題となります。

オンライン診療システムの視点

まだ制度も整備しきれておらず、さらに様々なプレイヤーがオンライン診療市場へ参入しています。

そのため、多くの日本人が利用しているLINEやZOOMなどのコミュニケーションツールや専用ソフトまであらゆる方法で診察が可能となっています。

病院・クリニックによってやり方が異なり、医療提供側・受給側の両者にとって不都合が生じており、これも普及が進まない一因といえるでしょう。

まだまだ黎明期にあり、どの企業が業界標準を作るのか未知の状況にあります。

オンライン診療の恒久化に向けた検討事項

令和3年6月30日に行われた「第16回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」では以下の内容が今後の検討項目として提案されました。

1.初診からのオンライン診療の取扱い等について

• 初診からのオンライン診療に必要な医学的情報の詳細、適さない症状・医薬品の処方等
•「オンラインでのやりとり」の取扱いの詳細や実際の運用
• 初診・再診を問わず、医師・患者の同意や、不適切な事例への対応等、安全性・信頼性の
担保に関するその他の論点

2.オンライン診療の推進について

• 医療提供体制におけるオンライン診療の役割について
•「オンライン診療の更なる活用に向けた基本方針の策定」について
• オンライン診療に限らずネットワークにおける医療情報の取扱い等について、社会のデジタル化の進展に合わせて整理していく必要があるのではないか。

3.その他、オンライン診療の安全性・信頼性に関する事項

• 初診・再診問わず、医師・患者の同意や、不適切な事例への対応等、安全性・信頼性の担保に関するその他の論点

今後もこれらについて議論を重ね、それを踏まえて今秋にはオンライン診療の指針を改定する予定です。

初診からのオンライン診療が可能となり、2022年度からの恒久化が見込まれています。

法は整備される可能性が高い中で、誰が音頭をとってどのように普及を推し進めていくのか、ユーザーのインセンティブ不足は解消されるのか引き続き注視していきます。