ヘルスケア業界に身を置くマーケター”トリプル“が様々なテーマに対して独自目線で分析して行くシリーズです。
以前、”売れる営業シリーズ”を配信した際に。「もっと詳しい情報を教えて欲しい」「もっと実践的なノウハウを教えて欲しい」そんなご意見を頂きました。少しでもご意見に答えられる様に、トリプル流メソッドの深い部分まで少しづつですが公開して行こうと考えています。
目次
はじめに
筆者は証券会社勤務後に、MRとしてヘルスケア領域に入り経験を積んだ後に、この2年間を新規事業やマーケティングの世界に身を置いて来ました。まだまだ新米マーケターですが、年間100回以上の顧客とのディプスインタビュー、グループインタビューの実践。そこから得た情報とデータの突合による洞察(insight)から分析を行う中でコンテンツマーケティング、プロモーション戦略、営業トレーニングなど実践して来ました。その経験から顧客により近く質の高い情報を得て最適なアプローチを実行する事が可能な「スモールマーケター」と言う新ジャンルを提唱しています。
スモールマーケターの3つの要素
スモールマーケターとして力を発揮する為の要素は、大きく3つに分類できます。更に3つの要素は10の項目に別れます。スモールマーケターの3要素はどの様なビジネスでも応用が可能な普遍的なポータブルスキル(持ち運び可能な技能)と考えています。ですから読んで頂いているあなたがMRで無くて、銀行員でも、車のディーラーさんでも使える内容です。
「情報収集」「分析」「効果判定」この3つの要素で説明しました。
#5「スモールマーケター 3つの要素」ヘルスケアマーケターの目~売れる営業編
情報収集
情報収集編では、2次医療圏を目安にした情報収集、院内情報の収集、医師の脳内情報の収集に分けて説明致しました。情報収集と言っても外部調査のデータや、ネット環境から得られる2次情報では無く、MRが活動する中で得られる希少性の高い生きた情報の1次情報の収集を指します。
それぞれの情報のタイプを、MRレベルで見た時のマクロ情報→ミクロ情報の流れで解説しています。その中でも最も難易度の高い「医師の脳内情報の収集」に関して深堀してお伝え致します。
#6「情報収集」ヘルスケアマーケターの目~売れる営業編(MR)
定量情報と定性情報 それぞれの目的
「定量情報」「定性情報」この2つの言葉を使いませんか?頻繁に耳にする言葉だと思います。この2つの言葉、正確に意味と目的を理解していますか?
どちらもマーケティング調査の中で重要な役割を持ちます。そもそも情報収集は目的が明確に有って行う事ですが、目的に応じて定量情報、定性情報は使い分ける方が良いです。
一般的に、マーケティングリサーチで判る事はこの3つです。顧客の購買行動に当てはめると
事実:何をどの様に購入しているか
意識:どの様な感情で購入しているか
反応:どの様な行動をとり購入するか
この3つを明らかにして分析する事で、的確な意思決定を行う事が調査の目的です。そして定量情報と定性情報の役割は”仮説”がキーワードに成ります。
スジの良い仮説を発見する為の情報が「定性情報」
仮説を数値的な裏付けを持って検証する「定量情報」
まず良い仮説を立てる為には定性情報を集める事が大切です。その上で定量情報により検証し、更に深い仮説を立てて改めて定性情報を収集する。それが洞察(insight)です。鋭い洞察を得られる人は定性情報と定量情報を巧みに利用して情報収集して分析しています。みなさん逆の目的で定量情報、定性情報これまで使ってませんでしたか?良かったら今日から参考にしてください。
最近では、SNSなどの情報を分析するソーシャルリサーチ、特定の集団に入り込んで行動様式から情報収集するエスノグラフィー。そのネット応用でネトグラフィー。なども有りますが。
下記の図が基本的な調査方法の一覧です。
なぜ、脳内情報なのか
良質な定性情報を得る為です。
医療従事者の中でも、薬剤の処方、治療目的の医療機器の選択に強い影響を与えるキーパーソンは医師です。昨今、医療従事者の働き方改革の一貫で、医師の業務の一部が看護師や薬剤師に権限移譲される様な動きも推進されてますが、現実的には殆ど影響の無いレベルです。その医師が何を理由に治療戦略を決めているか知る究極の方法が脳内情報収集です。50年先にはAIが担っているかも知れませんが、当面は人間の共感力によって為せる技ですから、代替される事は無いでしょう。
医師はEvidence Based Medicine(EBM)で治療方針を選択しています。ただ、これまでの筆者の経験から対象となる疾患よって、またその疾患の治療の成熟度合いなどによって薬剤や医療機器の選択理由は全く異なります。
以前の記事「BtoBtoC」でも触れましたが使用の動機は「患者フレンドリー」、「医療従事者フレンドリー」この2つの軸で大きく分類出来ます。更にこの2つの分類を細かく細分化して行く事になります。
#2「BtoBtoC」ヘルスケアマーケターの目~売れる営業編
患者フレンドリー
患者フレンドリーは、患者さんにとって有益な事。もっと平たく言えば患者さんの立場で喜ばれる事と言う意味です。患者さんは何らかの病気を患っているわけですから、その病気を完治出来る科学的な根拠の有る治療法、お金がかからない治療、時間がかからない治療などプラス面の増大、副作用が少ない薬剤、合併症の少ない手術などマイナスの低減などが代表的な事柄です。
医療従事者フレンドリー
医療従事者フレンドリーは医療従事者にとって喜ばれる事です。患者フレンドリーその物が、医療従事者フレンドリーに繋がりますし、患者さんが喜ぶ事が何を差し置いても優先度が高い。はずですが、医師も1人の人間です。私達同様色々な事情が有ると思います。考えられる要素は患者さんからのクレームや不安の声が少ない、治療成績が高まる、他の医療スタッフに迷惑をかけない、病院経営の面で有益、労働時間で見て楽、データが集まる事で画期的な論文がかける。など十人十色でしょう。
特に医療従事者フレンドリーは、中々本音として聞き出す事が難しい情報に該当する事から情報の集め方も工夫が必要です。
その様な事からキーパーソンとなる医師が治療ストラテジーをどの様に考えていて、その背景は何か。その際に使う薬剤や医療機器がどの様な選択動機で選ばれているか調査する必要が有ります。その為に高い精度で定性情報を引き出す技術が求められます。
まとめ
情報収集は調査目的が有って行う事です。目的に応じて、定量情報、定性情報の収集は選択する事で質の高い洞察が得られます。医薬品や医療機器の選択に強い影響を及ぼすキーDoctorの脳内に有る、選択動機を知る事で良質な定性情報を集める事が出来ます。
次回は医師の脳内情報を集める為の、技術的な側面をお伝え致します。
ヘルスケア業界でMR、新規事業開発、セールスマーケティングに従事。数多くのセールスマンとの関わり、MR研修やOJT等通じて実践的なトレーニングの経験も持つ。