2020年は今もなお厳しい状況にさらされています。
不自由な生活が続く中、一筋の光がみえてきたことも事実です。
先日も大きなニュースとなったファイザーのワクチンもその一つ。
今回はファイザーとはどのような会社か?ワクチンがもたらす日本の将来はどのようなものとなるのか?予測していきたいと思います。
目次
ファイザーについて
ファイザーはアメリカ発の世界最大手グループの製薬企業です。かつては全世界1位を記録したこともありましたが、2019年度はロシュグループに続く世界2位に位置しています。
517億ドルの売上(日本円換算約5兆4000億円)は日本企業トップの武田薬品工業の2倍近くにおよびます。
創業者はチャールズ・ファイザーで1849年が始まりとなっています。
長年抗生剤の開発企業として名が知られていましたが、90年代から高血圧や脂質異常症などの生活習慣病の開発へ力を入れ、数々のブロックバスター(年間売上1000億円を超すもの)を誕生させ世界中の人々の健康に革新をもたらしたといえます。
米国企業らしさとも表現できますが、ファイザーがここまで巨大化した裏側には幾度となく繰り返された大型買収劇があります。
有力な薬剤を保有する企業ごと買収するファイザーモデルをおこなうことでも有名です。
近年では英国大手のアストラゼネカ社を買収し、巨人になることを目指しましたが、交渉は決裂し現在に至っています。
良くも悪くも多様な文化で育った人材の集合体となっています。2020年度は事業部の分離もあり、世界ランキングは下がることが予想されていますが、COVID-19ワクチンにより来年以降は持ち直すかもしれません。
ファイザー製ワクチンについて
目下ワクチン開発は世界中で競争が繰り広げられていますが、ファイザー社より11月18日に95%の予防効果が期待できるとの発表がありました。
ファイザーの新型コロナウィルスワクチンは独ビンオテック社との共同開発になります。
世界初のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンを開発し、世の中に送り出すところです。
これまで多く用いられていた不活化ワクチンや弱毒化ワクチンとは異なり、ウイルスの目印となる抗原たんぱく質を入れることで抗体を獲得できるものになります。
季節性インフルエンザワクチンの有効率が50%程度に対し、コロナワクチンが90%を超えるとなるとものすごいインパクトがあります。
ファイザーを始め、アストラゼネカやモデルナでも90%超えの成績となったようで終息に向けた安堵感が広まりつつあります。
足元では欧米、日本ともに感染拡大は続きますが来年には終息に向かう観測が広がっています。経済活動の正常化期待もあり、世界的に株価が上昇していることからも読み取れるでしょう。
日本の未来は開けるのか?
ファイザーをはじめとするワクチン開発から日本の未来について2つのことがいえるのではないでしょうか。
日本が正常化するのは2022年以降になるか?
ワクチン開発が進んだことは日本人にとっても朗報でした。しかしながら、ファイザー製ワクチンのFDA承認は12月上旬とみられ、日本国内ではファイザー日本法人が申請に向けた準備段階です。
承認審査自体は今回も特例措置が講じられる可能性が非常に高いことから、早ければ年内、遅くとも1月には日本国内でも使用が可能となるでしょう。
それでも実際に日本国内に製品が届き全体に普及するにはどれくらいの時間がかかるでしょうか?
まずはサプライチェーンの課題があります。ファイザー製ワクチンは-70度の超低温下で輸送しなければなりません。空輸にて必要量をどれくらいの期間で輸入できるのか?また保存期間は通常の冷蔵庫だと5日程度。超低温下でも半年程度です。
まず米国から輸送されたあと、一時保管ができる倉庫は存在しているのか?その後医薬専門卸でも保存は可能か?またどれだけの病院が対応可能なのか?
米国の生産工場を通過してから、一般人へ届けるまでの設備を整えることから始める必要がありそうです。果たしてわずかな期間で整備可能でしょうか。
さらにワクチンは届いたものの、誰から使うのか?おそらく、医療従事者と重症化リスクの高い高齢者から接種可能となるでしょう。
一般の方へ届くのはいつになるでしょうか。
どれだけ早くても21年後半、遅ければ来年にかかることも視野に入れなければなりません。
もう一点押さえておかなければならないのは、接種可能となったことで果たして全国民が打つのか?といった観点です。
通常は接種後数年間の経過観察が必要です。どのような副反応が起こるのかも未知の状態です。さらに予防接種は自己判断にゆだねられています。
若い層ではワクチン接種が進まない可能性が高そうです。
人口の60%が抗体を獲得することで初めてウイルスの蔓延を防げるとされる中で、早期にそこがみえてくるのを期待しましょう。
競争力の弱さが顕著に現れている?
かねてより日本は世界と比べて開発力・競争力が弱いといわれてきました。既にあるものの改善は優れている一方で、ゼロから作り出すことが苦手とされています。
医療分野でも例にもれず、革新的な薬剤の多くは海外勢から生み出されています。
なぜか?
理由はいくつか眠っていますが、資金力が一つの大きな要因だといえます。
欧米諸国では資金調達が日本と比べると容易な環境下にあり、かつ短期的な失敗を社会的に許容されています。
ベンチャーが育ちにくいともよくいわれていますね。
日本的経営の弊害が長年尾を引いている可能性もあります。
企業が過去の成功に捉われており、新しい発想が起こりにくいことや、和を重んじるために意思決定に後れがでてしまうことが予想されます。
国産ワクチンが完成するのは早くとも21年秋以降となりそうです。
結果だけをみると、やはり海外勢との差が大きく開いていることが分かります。
30年間先進国で唯一成長しなかったことの現れともいえます。
ファイザーがワクチンを作ってくれたからこれで安心!と終わらずに、どうすれば日本の競争力が高まるのかといった点も考える必要があるでしょう。
まとめ
ファイザーをはじめとする、研究者たちの並々ならぬ努力により最短距離でワクチン開発が行われました。
景気回復の地盤が固まりつつあるとの観測が広がり株価も29年振りの高値を更新しています。
それでも、目の前の生活には変化がないのが現状といえます。
2022年以降の正常化というシナリオも視野に入れておく必要があるかもしれません。