企業分析

【2021年5月更新】“中外製薬株式会社”参謀侍が見た製薬会社の動向と将来性

この記事の読者は製薬会社のMRの方が多いのではないでしょうか?おそらく今の状況では病院に訪問できずにいるのではないかと思います。こういう時だからこそ業界全体・個々の企業を理解する時間に使いたいものですね。

今回は中外製薬を特集します。業界の方からするとがんのイメージが強いと思います。知れば知るほど興味深い企業ですよ。個人的には常にインターハイベスト8に入る古豪ってイメージを勝手に持っています笑

中外製薬株式会社基本情報

2021年12月期第1四半期決算情報

売上収益 1,688億円(対前同-106億円) 

国内:海外売上高 国内949億円(対前同-70億円)海外354億円(対前同-72億円)
営業利益 654億円(対前同-87億円) 

四半期利益 484億円(-43)

従業員数 7,384人(連結) 4,856人(単体)

平均年齢 43.0歳 平均年収 983万円

※出所中外製薬2021年12月期第1四半期決算発表資料

前年の2020年度は1000億円以上の売上を伸ばし、中外製薬にとって大きく成長を遂げた年になりました。

日本国内はマイナス成長となりましたが、海外での大幅な収益の増加により4期連続で売上収益、営業利益、当期利益が過去最高を記録しています。

期が変わり、2021年度のスタートはどうでしょうか。一見すると前同対比で下回っており、順調なスタートとはいえないようにみえます。ただし、国内売上、海外売上は期初の想定内で動いており、後半にかけてしり上がりに改善する見込みです。

一つ気がかりな点は、COVID-19の業績への影響はほとんどないものの、国内売上が薬価改定の影響もあり、年々減少傾向にあることです。

これだけ勢いのある中外製薬でさえも日本国内市場では舵取りが難しくなっています。

海外市場でいかに国内のマイナス分をカバーし、さらにプラスに持っていくか、その重要度が年々高まっていることを感じます。

中外製薬ってどんな製薬会社なの?

「創造で、想像を超える。」最近CMでこのフレーズを聞くことがあるのではないでしょうか?中外製薬は今までにはない革新的な新薬を患者さんに届けてきた医療用医薬品に特化した製薬会社です。

日本の会社としてさかのぼること1925年に中外新藥商會として創設されました。2002年にはスイスRocheグループと戦略的提携を結び傘下に入りました。しかしながら、東証一部上場は維持し経営の独立性は保たれています。

がん領域・骨・関節領域/ 自己免疫疾患領域 ・腎領域・その他領域の医療用医薬品を開発、販売しています。

自社開発製品のロイヤルティ収入もあり、非常に高い利益率を誇っています。

特徴はなに?

国内企業の中でも先行してがん治療薬の開発に注力してきました。その結果2008年以降11年続けてシェア1位を維持しています。また抗体医薬品分野では国産初の化合物を創製しました。

Rocheとの戦略的提携によりグローバルのネットワークを獲得し、自社開発品の導出、グループ製品の導入が容易となり売上規模拡大に繋がったと考えられます。

元々製薬業界は利益率が高いですが、そのなかでも指折りの収益性を誇っているといえるでしょう。まさに今は絶好調な時期ですね。

Roche社開発のインフルエンザ治療薬が導入されたことにより多くの日本人が助けられたことでしょう。

外資系企業に分類はされますが、企業文化は旧来の日本式が残る比較的体育会系な風土がある?と聞きます。

一方で時代に合わせた働き方は徐々に進んでいるようです。女性管理職率、男性の育児休暇取得率などまだまだ改善の余地はありますが、人事制度も次世代のモデルに変更していることから改革の途中といえるでしょう。

開発パイプライン

現在申請中の製品が2つあり、さらに2024年以降にかけて36本の試験を走らせています。内29本がオンコロジー領域であることからも、中外製薬がどれほどがん治療の製品開発に力を入れているかがわかります。

他方数多くのコンパニオン診断薬*として特定の遺伝子変異へ対応できるよう進められています。

※コンパニオン診断薬とは特定の医薬品の有効性や安全性を一層高めるために、その使用対象患者に該当するかどうかなどをあらかじめ検査する目的で使用される診断薬のこと

参謀侍の目

中外製薬は国内製薬会社の中でも先進的にがん領域の開発に取り組んできた。Roche社との戦略的提携独など独自のポジショニングを築き上げおり、競争力の高い製品を生み出しています。

昨年大型製品の血友病A治療剤を発売したことも今後の成長ドライバーになると予測されます。旧シャイアー社との激しい戦いになることが予測されるこの領域ですが、薬剤のポテンシャルでは競争力が高いとの声も聞こえているところです。

これまで独自のポジションを築き上げきた中外製薬ですが、最大手グループの背中が見えつつあるのではないでしょうか。

医薬品市場は横ばいから減少が予測されています。これまでは順調に革新的な製品を生み出してきました。さらなる成長を期待できる会社だといえるでしょう。

参謀侍の紹介>

通信企業でIT営業に携わる。その後ヘルスケア業界にキャリアチェンジしMRを10年間経験。メンバーの育成やプロジェクトの運営などを行う。経営知識を生かしヘルスケア企業の分析や将来の動向を独自路線で読み解く。

 

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